出版社内容情報
情熱のほとばしる恋愛時代から、短い結婚生活、夫人の発病、そして永遠の別れ……智恵子夫人との間にかわされた深い愛を謳う詩集。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
匠
156
「あどけない話」をきっかけに知った『智恵子抄』。言うまでもなく、夫である高村光太郎が妻を詠ったものなんだけれど、”智恵子は”でなく”をんなは”と書いている詩はセクシーな情感を詠っている。なんとなくそこに光太郎氏の無意識下の照れや女性への理想と実際の差を垣間見るようで興味深い。数々の詩から滲み出る智恵子への愛情と後悔と哀しみ。また、それらを通して見えてくる智恵子という人の繊細さと純真が、とてもせつない。 2014/04/28
takaichiro
131
ひとりの男が永遠の愛を約束した女に一生をかけて書き連ねた愛の詩集と回想録^_^高村光太郎、なんて幸運で粋な男だろうか!世に溢れる魅力的 な女性達の中から、好きで愛して止まないたった一人の存在に出会い、彼女が生き絶えるまでを、あなたの思うままに埋め尽くした!親子でさえそんな関係になれやしない。脇目も振らずずっとひとりの女を愛し続けた貴方も智恵子の無尽蔵の愛に満たされた。さぞ充実した人生だっただろう^_^誰もがそんな生き方に憧れる。だからたまに智恵子抄が読みたくなる。愛で満たされる感覚への中毒は治らない。2020/02/20
さゆ
125
2年前の冬に祖父を亡くしたとき、窓から入ってきた雪が祖父の体で融け、まるでまだ温度があり生きているかのように感じつつも雪と一緒に体を離れた、みたいな俳句を弔辞で読んだあの時の感覚が甦るようだった。親族を亡くすと日常とは別の現実に戻され、ひび割れていた関係が少しづつ修復されることもあるもので、毎日に忙殺されていながらも忘れてはいけない純粋な心に気付かせてくれる詩だった。とはいえ、実家の空き家どうしたものか‥2023/12/18
まふ
121
妻智恵子を偲んで書かれた詩文集。智恵子が精神異常を来してからも熱烈に智恵子を護り愛し続けた光太郎の魂の叫びが凝縮されている。邂逅以来インスピレーションを享けつつともに過ごしてきた智恵子を措いて光太郎の芸術的生命の源泉はなかったとさえいえる。穢れのない光太郎の精神だからこそ永遠の命を抱きつつ亡くなった智恵子と「合体し」純粋な愛情の言葉を撚り出すことができたのだと思う。28歳で結婚し52歳で亡くなった智恵子を光太郎は慕い、珠玉のような詩を生み出す。近代日本詩の貴重な作品といえる。2024/03/05
青蓮
98
詩集が読みたくて手に取りました。全編を通して著者の妻・智恵子への深い愛情が貫かれており、彼女が死してなおその愛はやむことはなかった。後半の「智恵子の半生」で「自分の作ったものを熱愛の眼を以て見てくれる一人の人があるという意識ほど、美術家にとって力となるものはない」と語る高村光太郎の言葉には説得力がある。彼もまた智恵子というミューズを得て己の芸術に邁進して行ったのだろう。しかし後年、最愛の人が静かに病んでいくのを見るのはどんな責苦よりも辛いものだったに違いない。2019/01/14