内容説明
九州の筑後領高橋村。この小さな村の大庄屋と百姓たちは、キリスト教の信仰を守るため命を捧げた。戦国期から明治まで三百年。実りの秋も雪の日も、祈り信じ教えに涙する日々。「貧しい者に奉仕するのは、神に奉仕するのと同じ」イエズスの言葉は村人の胸に沁み通り、恩寵となり、生きる力となった。宣教師たちは諸国を歩き、信仰は広がると思われたが、信長の横死を機に逆風が吹き始める。吉川英治文学賞他受賞作。
著者等紹介
帚木蓬生[ハハキギホウセイ]
1947(昭和22)年、福岡県生れ。東京大学仏文科卒業後、TBSに勤務。2年で退職し、九州大学医学部に学ぶ。現在は精神科医。’93(平成5)年『三たびの海峡』で吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』で山本周五郎賞、’97年『逃亡』で柴田錬三郎賞、2010年『水神』で新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』で小学館児童出版文化賞、’12年『蝿の帝国』『蛍の航跡』の二部作で日本医療小説大賞、’13年『日御子』で歴史時代作家クラブ賞作品賞、’18年『守教』で吉川英治文学賞と中山義秀文学賞をそれぞれ受賞。小説のほか、新書、選書、児童書などにも多くの著作がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yomineko@ヴィタリにゃん
78
帚木蓬生さんの作品を読むのは初めて。かなり調べ上げられたと思われる隠れキリシタンの詳しい話。26人もの聖徒達が殉教した様子も描かれ胸が苦しかった。鼻と耳を削ぐのを耳だけにしろと言ったのは石田三成。どっちみち残酷極まりない😡😡😡それを命じた豊臣秀吉はただの人殺し。そんな中イエス・キリストに一筋の光明を見、熱心に祈りを捧げていた人達に胸が熱くなる思い。下巻も楽しみです。2023/06/11
tomoko
44
九州の豊後領高橋村という小さな村で、農民たちがキリスト教を熱く信仰し守っていく物語。上巻は、宣教→禁教→殉教の章で、キリスト教伝来から秀吉が禁教令を出し、その後関ヶ原の戦いが終わったくらいまで。戦乱の世において、農民だけでなく大名たちも、何を信じ何に希望を見出せば良いのかわからず、信仰に助けを求めたのかもしれない。黒田官兵衛も洗礼を受けていたことを初めて知った。また、宣教師たちも故郷を捨て、宣教の地に骨を埋める覚悟で渡来する。信じる力の大きさに脅威をおぼえながら、下巻へ。2020/08/28
えみ
29
祈り。それは何人たりとも奪うことは出来ない。祈りはやがて“涙”となり“救い”となる。混沌極まる戦国乱世の世。偽りと罪に塗れた強き者、貧しく病める弱き者…祈り、そして人を思う心、謙虚で正直であるという“慈愛”により救済されるというイエズスの教え。多くの者達の心を捉え強く信仰された理由がよく分かった。イエズスの御心に従い生きる事が喜び、それこそが報酬だと言う貧しい宣教師の布教活動、禁教の脅威に晒されながらも信仰を守り通すと誓う小さな村の人々、命を懸けて祈る姿は心に迫る。人の救いとは?幸せとは?考えさせられた。2020/04/15
ロマンチッカーnao
21
隠れキリシタンの話。隠れキリシタンだと遠藤周作さんを思い出すけれど、流石にそこを超えるのは難しいだろうと思いながら読み始めました。舞台は、戦国時代末期。豊臣政権下で始まるキリスト教の禁止、それに伴う教会の破壊と殉教。戦国ものは、結構読んでいるけど、九州の戦国時代は全く読んでいないので、その部分でも興味深い。期待感満載で下巻へと進みます。2023/09/30
Midori Nozawa
17
遠藤周作の「鉄の首枷」を読んだので、読みやすかったです。帚木氏の本は初めてで、ラジオ文芸館で一作聞いただけでした。主人公は一万田右馬助、養子久米蔵(捨て子だったのを養子とした)。右馬助(うまのすけ)は大友宗麟大殿から「小さい国でもキリシタンで満ちあふれる場所にしてほしい」と頼まれた。また宗麟はザビエルから直接いただいた絹布を右馬助に授けた。高橋組というむらでは異人のパライソの説教を聞き、すごい勢いで洗礼を受けた。秀吉のキリスト教禁制により26人の殉教を経て、家康の世となり、むらにまたキリスト教がもどる。2020/11/16