内容説明
聖地イェルサレムを無血開城したにもかかわらず、法王に「キリストの敵」と名指されたフリードリッヒ。法治国家と政教分離を目指し、世界初の憲法ともいうべき文書を発表したが、政治や外交だけが彼の関心事ではなかった。人種を問わず学者を友とし、自らもペンを執って科学的書物をものした。「玉座に座った最初の近代人」とも評される、空前絶後の先駆者の烈しい生を描き尽くした歴史巨編。
目次
第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始まる
間奏曲(intermezzo)
第8章 激突再開
第9章 その後
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
75
法治国家と政教分離を唱えたからこそ200年後にルネサンスへと繋がったように思えてなりません。世界初とも言える憲法を発布したものの、関心事は広くあったようです。何度も破門されつつも王側の非を唱え続けたフリードリッヒ。それは烈しい生涯に通じていると感じました。2020/09/23
Tomoichi
51
下巻はほとんど歴代ローマ法皇との戦いに費やされ彼の死後の展開も執拗な法皇からの攻撃で悲劇的です。生まれるのが早すぎた彼ですが、非キリスト教徒の著者が宗教的偏向なしに名誉回復しているのできっと喜んでいると思います(笑)著者がキリスト教に対して懐疑的なのは西洋史を識れば知るほどキリスト教及び法皇の「毒性」が嫌になるんでしょうね。生臭政治坊主は古今東西時代を問わず「悪」でしかない。2020/09/21
読特
50
下巻に入っても皇帝の活躍は止まらない。と思ったら、すぐに「間奏曲」が始まる。関係人物たちの紹介、業績のまとめ。間に入ることで頭の整理ができた。更に進む。交代した次の法王との激突。異端の判決。「明日にはあなたにも起こり得る」この言葉が王や諸侯たちには効いた。法王には同調しない。政権に権力乱用され攻撃される人を黙殺する現代日本人は見習いたい。英雄を讃えるストーリーは楽しい。しかし、ヒーローの登場による独裁を望んではいけない。彼の死後、王朝は途絶えた。曲がりなりにも民主主義の現代日本は継続させなければいけない。2020/10/25
kk
48
ローマ教皇に代表される中世的なものに対して、自らのビジョンを高く掲げて孤軍奮闘した神聖ローマ帝国皇帝の物語。13世紀前半〜中葉というこの時代に、なぜフリードリッヒのような為政者が輩出され得たのか、とても興味を惹かれました。良きにつけ悪しきにつけ、いつもながらの塩野節ですが、欧州中世史の奇跡のようなこの魅力的な人物を紹介してくださった著者に感謝したいと思います。2020/10/25
rosetta
33
これにて塩野七生歴史エッセイ完全読破。満足感よりも寂しさしかない。それにしても歴代のローマ法王と言う奴らは執念深く嫉妬深い狂信者ばかりで、フリードリッヒが無血交渉でエルサレムを回復した事さえ、敵の血を流していないから不信心だと断ずる。もしこの時代に信長がいたら、ならお前の血を流してやろうかと、比叡山や本願寺の様にローマを焼き討ちしたに違いない。そうなっていたらルネサンスすら必要なかったかもしれない(笑)2020/10/27