内容説明
作家を志す大学病院の医師・相木悠介は、妻子を残して愛人・裕子と上京し、同棲を始める。だが、悠介は、前途への不安も手伝って、夜の銀座に勤めた裕子の目を盗み、アルバイト先の病院職員と密会を重ねる。そのことに気づいた裕子は、悠介のもとを去り、悠介は裕子を繋ぎとめようと狂気じみた行動にでる。惹かれあいながらも裏切りを繰り返す男と女の複雑微妙な関係を描く長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すこにゃん
52
上京から直木賞受賞直前までの自伝的小説。約二十年前に書かれたものですが、妻帯していながら女性と上京してさらに浮気を繰り返し、愛憎の果てに自殺未遂で病院の世話になったり二度も警察沙汰になったりと呆れかえる話が満載です。男の体面を守る為の身勝手と妄動に嫌悪感さえ覚えるのは私だけではないでしょう。恋愛小説を著す作家の「芸の肥やし」とはかくあるものかと畏れ入りました。あと当時の銀座のホステスの仕事内容などは興味深かったです。登場する女性達は実在するとあとがきに書いてありますが本書を読んだ彼女達の反応は如何に?2014/02/08
カーミン
15
作家を志す、医師の相木は、妻子を残したまま愛人の裕子とふたりで上京する。東京では生活のために、パートタイムの医師を続けながら作品を書き続けるが、裕子が銀座のホステスとして勤め始めたのをきっかけに、パート先の病院職員とも深い関係に陥る。渡辺文学は、どうも男性に都合が良い作品が多く、時々辟易してしまうこともあるのですが、それでも手にとって読みたくなる不思議な魅力があります。2017/08/30
カーミン
6
著者の私小説的作品。だらしなく女性遍歴を重ねながら、「男とはそういうものである」という開き直りの文章が至るところで見受けられます。男性目線で読むと、また違った魅力があるのかもしれないけれど。2014/08/01
yamacha6n19
2
出世作は「失楽園」。札幌で医師になった悠介は、作家への夢を諦めきれずに妻子を残し、愛人の裕子と東京へ。東京にて作家活動をしながらも、病院の事務の雅子や、舞台女優の貴子にふりまわされる。貴子が睡眠薬をのんで(偽の)自殺未遂を図り、動揺している悠介を見て、裕子が「あんなの芝居に決まってるじゃない。ああいう女は曲者よ。ぼうっとしてないで、気を付けなさいよ。」とたしなめるシーンは印象的。女の内側を女はお見通し!ということが分かる一冊です。ファンキーな色恋沙汰が好きな方に オススメ。2013/05/07
かりん
2
故郷に妻子がありながら東京で愛人と同棲しさらには愛人に隠れて浮気を繰り返す主人公。愛人への嫉妬から狂気じみた行動を起こし手錠をかけられるようなことも。 主人公と関係を持った女性達は嫉妬から、わざと部屋の中に自分の痕跡を残していったり、芝居と思われる睡眠薬自殺を図ったり、自分も他の男と付き合っていながら主人公に大金を肩代わりさせたり、主人公の狂人的な行動よりも嫉妬に対してはこちらのほうがずっと怖くて陰険だと思った。 男女の浮気はどちらが悪いとは言えないけど、怒らせると怖いのは確実に女性だな~と実感。 2010/10/01