出版社内容情報
田辺 聖子[タナベ セイコ]
著・文・その他
内容説明
多くの恋をし、恋心の煩悩と呪縛に苦しむ源氏は、最愛の女人・紫の上を失って、初めて愛の意味を知る。悲しみに閉ざされたままの源氏は、出家を決意する。下巻には、「花散りし梅が枝に残る匂いの巻」より「夢にも通えまぼろしの面影の巻」までを収める。遠く平安時代も、今も全く変らない恋愛心理、愛の物語「源氏物語」を、新しい現代の言葉で描いた『新源氏物語』本編、堂々完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ykmmr (^_^)
91
光源氏のplayboyも、老化と共に陰りが出て来る。夕霧・柏木を見ながら、自分の気持ちに向き合う事が日々刹那気味になる。そして、自らが一番大切にし、自分の一番の理解者である紫の上がどんどん弱り、他界。最後にはお互いになんでかんで、気持ちを伝え合ったけど。光源氏は誰よりも、良くわかっているだろう。一番に自分を見守り、支えてコントロールしてくれたのが誰であるか?playboyには必ず、そんな方がいて、その人の掌で転がされている。2021/11/05
優希
72
光源氏の恋愛心理を描いてきた物語もいよいよ終盤です。光源氏も妙齢になり、周りの死も意識され始めてきました。多くの恋をして、その煩悩に苦しめられてきた光源氏。そして最愛の紫の上の死に臨まなければならない想い。紫の上の想いより、自らを優先してしまうのですね。しかし、そこで愛の本当の意味を知ったのだと思います。時と生の移ろいは儚いものですね。2019/01/16
shikashika555
48
ちょびっとずつゆっくり読むつもりが、読み終わってしまった。 源氏物語の現代語訳、どれを読もうかと思った時に何故かAウェイリー版を、と考えたがボリュームと価格に負けて見送りとした。 何となく馴染みのある同世代より上の作家の抄訳がよいと思い田辺聖子さんのものを手にとる。 なんといっても読みやすさと、色めかしさと現実感のバランスがちょうど良い感じがして読みやすい。 与謝野谷崎林真理子などと比べると、不遜ながら感覚が自分に一番似ているように感じる。2023/06/10
aika
44
源氏と彼を取り巻く人々の人生の終わりを晴れやかに、そしてしみじみと映し出した最終巻は、読み終えるのが口惜しいほどでした。出世の叶わなかった明石の入道が、今生の別れの際に娘に宛てた手紙は忘れられません。女三の宮が正妻に迎えられてもなお、健気に振舞い続けた紫の上の、たっての願いである出家を許さない源氏の最後のわがまま。あまりにも心苦しい、生を以て報いを受ける源氏と、死を以て報いた柏木のコントラスト。それらはもの悲しく心のひだに染み込んできました。読み物として蘇らせてくれた田辺さんの源氏物語が読めて幸せでした。2020/04/20
ちゃいろ子
42
読む前は、ただただきらびやかで雅な恋愛模様が描かれている、、と思い込んでいた。 とんでもなかった。 登場する人々それぞれの心の中の想い、迷いや悩み、時代は違えども、誰かを想い焦がれる心理は変わりはないのだと感じさせてくれる。 また時代設定や人物像に込めた式部の想いや狙いを知ると更に感動が。 世間の皆さまが、この物語を題材に勉強されている意味が良くわかりました。 きっとこれからも何度も読み返す物語。 山本淳子氏はじめ様々な方々が解説本を書かれているのでまだまだ興味は尽きません。 いざ宇治十帖編へ! 2023/08/20