内容説明
「どどどどどどどどどどどどどどどどどど。世界一の倒壊が始まった」。もし、地面が2°傾いたら…そんな着想も筒井康隆の手にかかると、たちどころに爆笑の表題作に結晶する。異星への単身赴任者が全身全霊をこめてエイリアンと交流する「関節話法」など、正常と狂気の深~い関係から生まれた猛毒ユーモア七連発。永遠に読み継がれる名作中の名作を厳選した自選爆笑傑作集第二弾。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌「NULL」を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が「宝石」に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’97年、パゾリーニ賞受賞。’96年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ばりぼー
61
最近は筒井先生の初期短編集などは入手しにくくなり、図書館に寄贈などするんではなかったと後悔してます。音楽CDのベスト盤も、満遍なく長所を拾おうとして印象が薄れる傾向があるので、やはりバンドの瞬間最大風速を刻んだ1枚、ツェッペリンなら「Ⅳ」、パープルなら「マシン・ヘッド」などの方が、並の編集ベストよりインパクト大です。筒井先生の短編集なら、「日本列島七曲り」か「メタモルフォセス群島」か「宇宙衛生博覧会」かって、いきなり矛盾してますね。「関節話法」と「毟りあい」が目当てでしたが、初読時の衝撃が蘇りました。2016/07/03
ケンイチミズバ
54
過ちを認めない行政や役人をデフォルメして痛烈に批判しています。建築物が施工不良で傾いても愚の音も出ない証拠が出るまで決してミスを認めない、役人への賄賂を捻出するために強度を落とした結果、都市全体が傾いてゆきます。それを指摘した大学教授は変人扱いでうやむやに。傾きを体感していても最後まで認めず女性市長はタイタニックよろしく水没する都市と命を共にします。当て字の名前もそれ自体が風刺にもなっていて筒井先生らしい作品ですが文学性はほぼないです。これを面白がって読むのは、概ね昭和のギャグ世代かな。2016/06/03
なる
48
読書会で筒井康隆の本を、ということで紹介されて興味を持った本。間接話法ではなく関節話法なのが重要。異星人との交易が行われている世界が舞台となっている。異星人の星に常駐することになった主人公が異星人の言語である関節話法、つまり骨の関節を鳴らすことでコミュニケーションを行うドタバタに巻き込まれて行くという、筒井康隆らしい奇想天外な話。他言語の難しさをわかりやすいテイストで皮肉った話にも取れるし、何よりその発想に舌を巻く。犬人間やら猫人間やらという設定がしれっと盛り込まれているのに敢えて触れないのも面白い。2022/10/02
ざるこ
39
7篇。まず既読の「関節話法」関節を鳴らして会話する異星人との接触。疲れる!こんなに身体を酷使しないと会話できないなんて。笑い過ぎて腹が痛い。ラスト一行が最高。「最悪の接触」の全く噛み合わないマグ・マグ人のイカレ具合もお気に入り。異星人なんて実際分かり合えないだろうよ。「傾いた世界」に於いては登場人物の名前聞くだけでもう満足。「毟りあい」の狂人たちのえげつなさはもうしょうがない。これが筒井康隆だ。今回も筒井菌が私の頭の中にどどどどどと侵入してきて、がががががと脳を刺激、いひひひひと去っていった。また会おう。2022/11/12
おにく
35
事前に検索した筒井氏の“おすすめタイトル”で、よく目にしていた“関節話法”が収録されてます。「マザング人は関節話法で話します。」普段、身体をコキコキ鳴らす癖に目を付けられ、高圧的な局長から半ば強引に外交を任されることになった男の苦悩。オチも笑えてお気に入りです。今回の筒井氏が自選した“ドタバタ傑作選”のラインナップを見て“ドタバタ”という状況が、当人たちにとって、普通の精神状態じゃないことを感じさせます。“毟りあい”や“傾いた世界”などの短編は、過去の様々な事件を思い出しました。 2017/09/11