内容説明
戦争にまきこまれた百姓・沢庵が、欲に目がくらんで〈大将〉の影武者となった。ところが、彼の息子が敵方の〈大将〉の影武者になったので、事はややこしくなった…偽者かと思えば本物、味方かと思えばやっぱり敵―上方歌舞伎を著者が整理・改作し、スラプスティック劇顔負けの大悲喜劇に仕立て上げた「影武者騒動」ほか「猪熊門兵衛」「破天荒鳴門渦潮」の意欲作3編を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
調“本”薬局問悶堂
2
ややこしい!ぜんぶややこしい。 【影武者騒動】が一番分かりやすかった。他は途中からなにがなんだか。でも面白い。 いのうえ歌舞伎もそうだけど、やっぱり時代に合わせて変わるのはいい事で、それが本来の歌舞伎なのだと思う。 日本にはあとから演劇とかが入って来て、それとは違う日本独自の舞台芸術を伝統芸能と位置付け、古いものを守る事こそよしとしてしまったけれど、それは発展的だったものの変化を止めてしまったんだな。 古いものは古いものとして、残しつつ、新しいものはどんどん進化すればいいのだ。 《2020年7月 登録》2014/04/24
aki
1
「影武者騒動」「猪熊門兵衛」「破天荒鳴門渦潮」の3篇を収録。いずれも元ネタはあるようだが、頭からしっぽまで筒井康隆の作品になっている。たとえば「鳴門渦潮」のサブタイトルは「慶祝大鳴門橋完成」。秀吉の時代の「千鳥の香炉」の紛失と捜索の物語だが、ラストシーンは大鳴門橋の建設現場。時間も軽々と飛び越える。表題作の登場人物紹介には「百姓沢庵 実は北条時政 実はやっぱり沢庵」「お袖の夫 十作 実は佐々木四郎左衛門高綱」とややこしい。歌舞伎でよくある「実は~」のパロディで、しまいにはなにがなんだかわからなくなる。2014/12/10
Mikey
0
歌舞伎の台本みたいで読みにくくて頭に入りにくいので、中断。2017/04/30
akiu
0
「筒井歌舞伎」3篇収録。表題作は登場人物の正体が「実は…」「実は…」でクルクルと入れ替わり、大混乱のまま突っ走るスラップスティック。脳がウニになる…。その他2篇は、分量としてはこちらの方が長くて、読み応えたっぷりでした。こちらも要素としては「影武者」的ではある。面白かったです。これ、実際に上演されたことあるのかなぁ。2010/01/14
sto65
0
いや、おもしろかった。歌舞伎の台本でこんなにも嵌まるとは、筒井先生の筆力に舌を巻くばかりである。実際に、舞台に掛けたら展開の早さで訳が分からないことになるかもしれないが、見てみたい気がする。本の最初に舞台装置挿図が載っている。これを参照しながら読むだけでも、舞台を見ているようで十分楽しめた。2019/01/30