内容説明
マスコミ、主婦連から俗悪の烙印を押されたSFマンガ家の怒りが爆発する「くたばれPTA」。高度成長時代の会社員のモーレツぶりを描いた「猛烈社員無頼控」。処女が夜ごと10億の男たちと交わる「20000トンの精液」。一卵性双生児の弟が、自分の恋人を奪った兄に奇想天外な方法で復讐する「かゆみの限界」…風刺SFからホラーまで、黒い笑いが全開のショート・ショート24編。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌“NULL”を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が“宝石”に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’96年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。’97年、パゾリーニ賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やっさん
178
★★ ショートショート集。星新一はたくさん読んできたが、筒井康隆のSSは初。当然だが作風が違いすぎる。辛辣すぎる。過激すぎる。ウィットに富みすぎている。過ぎたるは及ばざるが如し。ちょっと肌に合わない。2018/03/22
hit4papa
92
著者の作品の中では実験的なものが少なく、比較的読みやすい作品集です(他の短編集からの再録でありオリジナル短編集ではありません)。SF、奇妙な味とバリエーションは豊か。「2001年公害の旅」は現在のコロナ疎開まんまですし、「20000トンの精液」はVRの先を暗示した作品です。猛烈の塊と化した男を描く「猛烈社員無頼控」は笑えます。植民星の紛争に翻弄される男を描いた「モケケ=パラリパラ戦記」は、アルフレッド・テニスン『イノック・アーデン』を彷彿させる叙情的な傑作です。2020/04/04
優希
89
粒ぞろいのショートショートでした。当たり外れはあるけれど、全体としては面白かったです。エグさは少なめですが、毒のある危険な作風はやはり癖になります。2015/11/16
GAKU
70
最近フェミニズムに関する本を読んでいて、そこでここに収録されている『女権国家の繁栄と崩壊』が出てきた。内容覚えていなかったので再読。昭和45年の作品だがフェミニズム、当時はウーマンリブ?でしょうか、痛烈に批判。他にも表題作の『くたばれPTA』も教育ママを批判。批判に対する良し悪しは別として、やはり筒井康隆さんは面白い。大好きな作家さんです。2017/05/06
HANA
66
50年近く前、昭和40年代の作品が収められた短編集。時代を反映したものが見受けられるが、いくつかは現在でも通じるテーマを孕んでいる。普遍性なのか著者の先見の明なのか。あと自分が好きなの程、問題作なような気がする。表題作「くたばれPTA」等は著者の断筆騒動を思い出すし、「女権国家の繁栄と崩壊」は今出したら確実に抗議で発禁騒動が起きそう。過去の物といえるのは「猛烈社員無頼控」くらいか、一番好きなんだがなあ。現実を戯画化するとすぐ文句が出る昨今に比して、ブラックジョークが言えた時代の作品を久々に堪能できました。2019/01/22