内容説明
テレビのニュース・アナが、だしぬけにおれのことを喋りはじめた―「森下ツトムさんは今日、タイピストをお茶に誘いましたが、ことわられてしまいました」。続いて、新聞が、週刊誌が、おれの噂を書きたてる。なぜ、平凡なサラリーマンであるおれのことを、マスコミはさわぎたてるのか?黒い笑いと恐怖にみちた表題作、ほか『怪奇たたみ男』など、あなたを狂気の世界に誘う11編。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌“NULL”を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が“宝石”に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’96年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。’97年、パゾリーニ賞受賞。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。’02年、紫綬褒章受章。’10年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バネ
74
新年1発目の読了は、最近何かと話題の筒井康隆作品。昔、私は星新一派、兄が筒井康隆派だったコトを思い出す。ソレにしてもコレが50年前の作品とは思えないってコトは、時代が進化してもヒトは案外変わってないというコトかもしれない。 私が気に入ったのは、「だばだば杉」「YAH!」「心臓に悪い」。サラリーマンの悲哀と、何とかヤリ過ごそうと躍起になっている姿に自分を重ね合わせ、しみぢみと感慨にフケッてしまった。 2024年は、どんな1年になるだろう?今年も、読書の海を航海したい。 2024/01/01
こばまり
56
50年前の煮しめたような頁を開けば、只ならぬテンポとテンションにあっという間に飲み込まれてしまう。筒井康隆の凄みと、本という媒体の凄みをしみじみ感じてしまった。「講演旅行」や「熊の木本線」的な世界観は私、夜な夜な夢に見たりもする。2024/04/01
北風
48
ジュンク堂で限定復刻されたらしいです、久しぶりの再読。やはり面白いです。「おれに関する噂」とか「熊の木本線」なんてストーリーを克明におぼえてましたよ。どこか呑気な「通いの軍隊」なんてめちゃくちゃ面白いなあ。40年以上も前なのに全く色褪せない面白さです。2015/07/01
saga
45
【再読】テンポの良い短編集。「講演旅行」は私小説のようだ。両国駅から総武線で向かったC市とは我が故郷のような気がして、それだけで親近感がわいてきた。「通いの軍隊」は前にTV(世にも奇妙な物語)で映像化されたやつだ。結末は小説のほうがブラックユーモアが効いている。2017/07/12
たか
39
筒井康隆のブラックユーモアが冴える初期短編集。いささか痛烈過ぎるブラックユーモアにより食傷気味になってしまうが、何故か懲りずに筒井康隆の本を読み続けていた。D評価2017/12/20