内容説明
父、檀一雄の思い出は、昔の家の記憶と共に蘇る。原稿に行き詰まった父が夜中に料理をしていた台所。友人坂口安吾を居候させていた書斎。父お手製の竹馬で遊んだ庭―。父は亡くなり、家は建て直された。現在暮らす家の煩雑な悩みは尽きることがない。けれど私の中には「生活すること」を愛した父の魂が息づき始めている―。深い共感と切ない郷愁を誘う、“家”にまつわるエッセイ集。
目次
能古島の家―月壷洞
建てたそばから後悔は始まる
石神井の家―瓦全亭
他人の住まいはよく見える
離れ―奇放亭
思い出は日ごとに美しい
死んだ親があとに遺すもの
モノは限りなく増殖する
著者等紹介
檀ふみ[ダンフミ]
東京生れ。作家檀一雄の長女。魔應義塾大学経済学部卒。高校在学中に女優デビュー。数々の映画、テレビドラマなどで活躍する一方で、エッセイストとしても高い評価を受けている。『ああ言えばこう食う』で1999(平成11)年、講談社エッセイ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
158
檀ふみさんのエッセイです。父親との思い出がかなりの部分を占めていて壇一雄が自宅ではどのような感じであったのかがよくわかります。子煩悩な感じなのでしょう。また「火宅の人」そのものの時代などのことも書かれています。濫費大魔王と言うことで、ふみさんのお金も使って勝手に家をどんどん作ったり改造したりしていきます。仕方がないと思いながらも情愛があふれているエッセイだと思います。2016/01/12
じいじ
95
長閑に縁側で語り合う父娘の写真が、なんとも頬笑ましい。さすが作家の血筋でしょうか、娘ふみさんのエッセイは面白かった。共感して、時折おかしくて笑わせていただいた。著者の家族との楽しかった想い出が入念に綴られています。曰く「父は濫費の大王。預貯金はゼロ。給食費が払えなくて悲しい思いをしたのは、一度や二度ではなかった」と。或る時、そうしたカネのピンチを救ってくれたのは、作家仲間の丹羽文雄だったとのこと。一雄の書状を持参した妻にポンと5万円の大金を貸してくれたそうです。『火宅の人』は読まねば、と思っています。2020/09/17
kinkin
83
檀一雄氏の長女、檀ふみさんのエッセイ集。父との思い出がある住まい、海外の住まいについて、庭や書斎のこと他。檀ふみさんのエッセイは初めて読んだ。とても読みやすくて優しい文章だ。モノは限りなく増殖するという章の中に「ダメだ、捨てられない!」という話があった。寝る前に読む本を選りに選るためにそんな本が堆積していき本棚がいっぱいになる。この経験は本棚の大小はあれど読書好きには誰しもあるのではないかと思う。2016/12/27
金吾
43
○父親と家に関する話が多いノスタルジーを伴うエッセイです。檀ふみさんは庶民ではないことはヒシヒシと伝わりますが、言い方が上手いためかイヤな感じなく楽しく読めていきます。本の増殖の話は実にその通りと思いました。2023/08/30
おいしゃん
39
鋭いながら毒のない、品のある文体。住まいに関する、とても良いエッセイ。父である、檀一雄「火宅の人」を読んでから読むのを、特にオススメ。2018/09/08
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- 和書
- まどろみ消去 講談社文庫