新潮文庫<br> みいら採り猟奇譚

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新潮文庫
みいら採り猟奇譚

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  • サイズ 文庫判/ページ数 413p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784101161020
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

相良外科病院のひとり娘、比奈子は19歳で、38歳の内科医・尾高正隆と結婚した。昭和16年の初夏ふたりの生活が始まった。正隆は、今から少し遊ぼうと、比奈子に、真に生きることを教えはじめる。快楽死を至上の願望とするマゾヒストの彼は、妻をサディストに仕立てあげた…。グロテスクな現実と人間本来の躍動と日常生活のディテールの濃密な時空間に「快楽死」を描いた純文学。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

YM

77
読友さんの感想に惹かれて。事前情報ゼロでスタート。谷崎フォロワーの河野さんだからきっと何かあるだろうと思いながら読み進めるも、ほとんどが戦時下の、ある医者一族の日常が、丁寧に丁寧に丁寧に綴られる。しかし、だんだん夫がマゾヒストで、若い奥さんをサディストにしようとしていることが分かってくる。「痴人の愛」みたいな関係性だけれど全然違う。もっと日常的で、閉ざされた世界。むしろこれくらいは、どの夫婦も少なからずあるのではないか。しかしラスト5ページ、誰にも到達できない二人だけの愛が完成してしまった。2015/01/08

ナマアタタカイカタタタキキ

69
あの“かくれんぼ”が、やがて到達する真の静寂。雑多なものが排除された、戦時下というある側面では透明な背景、そこに描かれる淡い色彩の幸福と夫婦愛。そんな精巧な絵画に、一滴ずつ墨汁を垂らすような背徳感。こうも倒錯的なものが、静かな日常の中に介在している。良く描かれた絵はこの世にたった一枚ではないが、一度黒く染まった絵画はもう元には戻らない。遊びではないサドマゾが、一回性のそれを頂点と見ていることがよくわかる。常識的な模倣行為はせいぜいそれの疑似体験に過ぎない。私には真似事でも手に余るほど。読書体験のみで十分…2021/11/04

*maru*

41
快楽死を至上の願望とするマゾヒストの夫は、妻を自分好みのサディストに仕立てあげた…。何ですか、この魅力的なあらすじは。もう、これだけで充分に濃い。戦時下という激動の時代の中で、静かに自らの欲望を解き放つ男と受け入れる女。M→男、S→女の構図もぞくぞくしちゃう。願望、快楽、哀切、思慕、幸福。そしてその先にある圧倒的な静寂を目の当たりにし、読み手も言葉を失うだろう。まだまだ私の知らない世界があった。それが堪らなく嬉しい。巻末の吉行氏との対談、蓮實氏の解説で得た物語の更なる深みを余韻とともに噛み締める。2018/07/04

三柴ゆよし

27
虐められたい夫が歳下の妻をサディストとして育てあげ、最終的には究極の快楽を得る話、とそれだけ書くと短篇にも収まりそうな題材だが、本作において特筆すべきは、河野多惠子がこれを四年というゆったりした小説時間の内に展開させていることである。いよいよ日本が本格的な戦争に突入していく緊迫した時代を背景に繰り広げられる、新婚夫婦の最初はささいというほかない戯れは、泥沼化していく戦局に比例するかのようにすこしずつ行為の度合いを増し、ある時点で読者は、彼らがいつの間にかずいぶん遠いところにいることに気づき、愕然とする。2018/01/09

林 一歩

22
淡々と描かれた変態小説。所謂、国内メタフィクションの到達点だと思う。2013/04/20

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