感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
95
函館出張のお供に急遽書店で閉店間際の書店にて選書した一冊。実際には函館五稜郭での描写は数頁のみなのだが。颯爽闊達で粋な池波氏の筆と八郎の短い生き様が合わさり、函館の投宿先ホテルで一気に読了。その後、五稜郭に早朝ランニングで行けた事は正に僥倖であった。池波氏語り口と北海道・函館の空気も大いに作用した事は間違いがない。しかし、五稜郭に至るこの徳川末期の史実は歴史の勉強で学んではいるのだが、改めて読んでも哀しい歴史的悲話となる。それを八郎の短い人生と併せ爽やかに粋に、しかも艶っぽく進める池波氏に脱帽。2024/07/15
優希
43
面白かったです。伊庭八郎の壮絶な人生を一緒に体感しているような感覚に陥りました。遊撃隊として官軍と戦いつつ、遂には五稜郭へ。激動の時代に生きた剣士の恋と信念に引き込まれます。2023/03/11
drago @名人戦堪能中。
32
池波作品の初読みは、図書館の新刊コーナーにあった本作との偶然の出会い。 ◆江戸四大道場の一つ「心形刀流」の跡継ぎである伊庭八郎が、大政奉還後の薩長の容赦ないやり方に納得できず、負け戦と分かっていながら徹底抗戦を貫く。武士としての矜持が格好いい。 ◆彼を支える鎌吉との友情、吉原の花魁・小稲との恋物語が花を添える。上手い。 ◆さすが、戦後を代表する時代&歴史小説家。私自身が50代に入り、司馬遼太郎や池波正太郎の歴史小説をようやく面白いと感じるようになってきたのだろう。今後の楽しみが増えたかな。 ☆☆☆☆2020/08/18
那義乱丸
9
伊庭八郎、かっこよかった!岡田屋鉄蔵さんの『無尽』にハマってるので、この本を読みながら私の脳内では岡田屋ビジュアルのイバハチが『成すべきを見定め、それを成す為に』突き進んで行った。隠し通した死病という池波流設定の効果もあって、自分の信念を貫き、駆け抜けるように生きた剣士だったのだなぁと心に強く残った。まだ二十七だと心を痛める鎌吉に八郎が伝えた「おれはたのしかったよ。」という言葉に思わずほろり。この本を読んで伊庭八郎がますます好きになった。2022/03/14
Kira
8
図書館本。集英社文庫版既読。心形刀流伊庭道場の後継ぎに生まれた八郎は、十六歳で秘密を抱いて学問をあきらめ、剣の道に進む。幕末の動乱の中で幕臣として遊撃隊に組み込まれ、薩長の官軍を相手に戦いを続ける。動乱に身を投じて、二十七歳で命を散らした伊庭八郎の壮絶な生き方にロマンを感じた。負けるとわかっている戦いに 八郎が命をかけるのは、「ただ、微衷をつくさん」がためなのである。滅びの美学みたいなものも感じる。八郎に最後まで真心をつくした板前の鎌吉と、おいらんの小稲の生き方もすがすがしい。 2021/03/15