内容説明
「私は、いまこのときのために生まれ、生きてきたかのように思われます」。父の不運の理非を確かめたい一心で故郷を出奔して十一年。因果のめぐりあいに鍛えられ、多くの縁に導かれ磨かれた二十五歳の安兵衛は、恩人の助太刀に、全てを投げうち馳せつける。それはまた新たな運命の幕開けでもあった―高田の馬場の決闘と忠臣蔵の二大事件を疾けた、義士随一の名物男の、痛快なる一代記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
47
高田馬場の決戦と吉良邸討ち入りという2大事件が描かれます。全てを投げ捨てるように駆ける安兵衛。新たな運命への入り口に立ったと言っても良いでしょう。それが忠臣蔵だったのかもしれません。そしてかつて予言された通り、34歳という若さでこの世を去ります。その生涯は痛快ともとれるかもしれません。2023/02/26
saga
46
下巻には、後世まで語り継がれた高田馬場の決闘と吉良邸討ち入りが描かれる。本書を読んだのも、高田馬場の決闘に関わった安兵衛に興味があってのこと。堀部弥兵衛の娘婿となり、赤穂藩に取り立てられたのも運命の悪戯としか思えない。赤穂義士に対する幕府の処罰は、結果的に彼らの末節を汚さない効果を得たが、潔く切腹して果てる場面は涙をそそられた。2020/05/16
カレー好き
24
高田馬場の決闘と忠臣蔵の二大事件で名を馳せた堀部安兵衛の痛快で真っ直ぐな人生と、脇を固める魅力的な人物たち。赤穂浪士四十六名、切腹を命じられても全てをやり切った男たちは皆清々しい。日本人は忠臣蔵が大好きである理由がよく分かりました。2024/06/20
フミ
22
忠臣蔵で一番の剣豪キャラ「堀部安兵衛」の人生を丁寧に、想像豊かに描いた小説の下巻です。 赤穗藩・堀部家に養子として入る前に「高田馬場の決闘」という、大きな事件のヒーローになるのですが、そこまでだけで、下巻の200頁くらい使って、様々な恩師と繋がり、女性と恋もし、成長していく姿が、丁寧に描かれています。後半、200頁はひたすら「忠臣蔵の話」でしたが、討ち入り直前~切腹までの、恩人たちとのシーンも印象的でした。 ただ「天才肌でガンガン行く主人公」が好きな人は、司馬さんの「燃えよ剣」とかの方が合うかもですね。2025/01/26
旗本多忙
19
池波正太郎を随分読んでいた時期があって、この堀部安兵衛もその頃読んだ。もう、内容は忘れているが、最近 は往年の作家山手樹一郎が好きで私の中ではブームである(笑)山手樹一郎全集も40巻からあって、かなりの人気大衆作家であるのは間違いない。 たまたま「青年安兵衛」というものを書いているのを知って読んでいるのだが、池波氏も良いが、僕はそれ以上に若き日の安兵衛の小説は良いのではないかと思う。