内容説明
和議休戦の翌日から、徳川安康はすべての参陣者を動員して外濠のみならず内濠までも埋め立てさせ、真田丸もまた破却されてしまう。幸村を取りこもうとする家康の計略により、信之(信幸改め)と幸村は京都で会見するが、幸村の家康の首を取るという信念はゆるがない。元和元年五月七日、裸城となった大坂城を打って出た幸村は、若き日の予感どおりに向井佐平次とともに戦場に倒れる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
126
栄光の残滓にすがる士などいやしない。死に場所を得た後藤又兵衛、痺れる闘いを求めた毛利勝永、そして家康の首に穏やかな執念を抱き続けた幸村。夏の陣、大坂城ついに堕つ。日ノ本一の兵として散った幸村。兄・信之の哀愁も、お江の思慕も、佐平次の慕情も、三九郎の憧憬も全ては夢のあと。『真田丸』や「城塞」でも幾度か遭遇してきたカタルシス。あぁ、やはりこの男を喪うのは悲しい。信之と幸村…開戦前の最後の再会がなんとも叙情的。盃に満たした互いの思い、語り合う目と目…もう胸がいっぱいです。長い長い物語、いよいよエピローグです。2021/08/10
優希
107
大坂の陣、勃発です。何と言っても家康の動きが凄いとしか言えません。老齢にして陣営を率いる力は並々ならぬものがあります。真田丸を破却されたことで、幸村軍の不利は見えたようなもの。それでも家康の首を狙う幸村は、豊臣への想いが強いのでしょう。だからこそ、その戦いぶりは涙を誘います。健闘虚しく、戦場に散っていくのが悲しい。でも、その姿は最後まで立派な武将そのものでした。豊臣の最期は、幸村の死でもあったのかもしれません。家康も去り行く予感を匂わせつつ、物語も終わろうとしています。2016/11/09
シン
88
最終巻目前、大坂夏の陣にて真田幸村戦死!?歴史的事実ではあるがストーリー構成上どうなるのか?最終巻はやはり信之を中心に展開されるのでしょうか?長い道のりでした。あともう一息。長かった。2016/05/04
伊田林 浮刄
83
★★★★☆幸村死す。何に限らず歴史物ってある意味最初からネタバレなわけで死に向かってのカウントダウンが始まってからは頁をめくる手が「早く読みたい」と「読み進めたくない」の間で行きつ戻りつ状態。最後の最後まで追い求めた大御所の首級を獲るための僅かな希望や戦略や可能性も全て絶たれ絶望のなか家康の本陣に突っ込んだ彼の気持ちは如何ばかりか。でも400年経った今もこうして小説や大河に描かれてるんだから以って瞑すべしかもですな2016/10/03
タツ フカガワ
79
大坂夏の陣を前に、東軍に勝てないまでも真田家の兵法を天下に示して死を覚悟する幸村。その気概は兄の信之はもとより草の者たちにも伝わり、無言のうちに今生の別れを告げる場面がなんとも切ない。が、なんといっても幸村の魅力が全開の「血戦」の章が圧巻! 血潮にまみれて家康を追い詰めながら戦場に倒れる幸村に涙々の11巻目は、シリーズ屈指の面白さ。それにしても樋口角兵衛はどこへ消えたのか? いよいよ最終巻へ。2023/04/29