内容説明
酒と女に溺れ家中の鼻つまみものである榎平八郎は二十一歳。七百石の旗本の三男に生れながら妾腹の子ゆえ家来にまで蔑まれている。ある夜女を抱いた帰途、何者かに襲われる。やがて、それは彼を疎む父親の命であることが判明する。徳川吉宗が将軍位について二十余年、いきいきとした時代を背景に、青年ざむらいが意地と度胸で、己れの道を切りひらいていく姿を描く長編時代小説。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
1923‐1990。東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠
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感想・レビュー
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優希
48
面白かったです。父親に疎まれている榎平八郎が家を棄てるのは当然のことと思いました。吉宗が将軍の生き生きとした時代に己を貫いていった平八郎が爽やかでした。2023/03/11
Makoto Yamamoto
24
再読本。剣にめっぽう強い主人公榎平八郎の21歳から33歳までの侍としての成長記録でしょうか。 池波作品てんこ盛り。江戸の町道場『剣客商売』、盗賊『雲斬り仁左衛門』、火付盗賊改方『鬼平犯科帳』等々。 600頁を超える長編ながら、どんどん読み進んでしまう。 人間関係は池波節が聞こえるような回し方で、好ましい。2021/01/24
rakim
15
池波さんのシリーズ物のエキスを集めた習作にも感じる一冊。妾腹の旗本の三男という立場の榎平八郎。将軍家の闇の争いに関わる密偵たち。大泥棒一味。火盗改奉行、道場主、なども絡んでの話は面白く一気に読みました。でもこの小説にこのタイトル?と少し違和感を感じながら読んでいたのですが、「チョーンチョンチョンチョン」と拍子木の音を聞きながらの幕引きのような最終の場面・・・で個人的には納得してしまいました。池波さん、この小説を書き上げてから題名つけられたのかな・・と勝手に。(積6/36)2016/05/29
Kira
14
購入しての再読。面白すぎてページをどんどんめくった。妾腹に生まれた旗本の三男榎平八郎がたどる数奇な運命の十二年間を描く。実の父親が自分を殺そうとしていることを知った平八郎が家を出奔するところから、話の展開が早すぎて600ページあまりが短く感じる。再読の今回は、将軍家と尾張公の確執が興味深かった。静かな人物として描かれている尾張宗春が気に入った。2022/08/17
アンベラー
13
そりゃあ実の父親に命狙われるのはさすがに酷い話だ 理不尽なことではあるが兄たちが無くなり最後に平八郎が家督をつぐこととなり数奇な運命しかし、昔ならあったことだろう2023/06/24