内容説明
吹き荒れる学園紛争の嵐は頂点に達し、’69年1月、東大安田講堂に機動隊が出動した。このころ、司馬遼太郎は新聞小説『坂の上の雲』を連載。さらに『城塞』『花神』など次々と長篇の執筆に取りかかる。第4巻は、「戦後、日本という国家が軽くなったので学生たちはやるせないのかもしれない」と嘆ずる「軽い国家」等、世情騒然とする中、ゆるぎない歴史観をもとに綴ったエッセイ65篇を収録。
目次
挫折の政治家、誇るべき革命家(園田日吉著『江藤新平伝』)
小さな希望
まぼろしの古都、平泉
海流が作った町
無題(『ドキュメント日本人』)
痛々しさと明るさ
出石の兄弟
米のこと
防衛のこと
肥前五島〔ほか〕
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923‐1996。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表。’66年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。’93(平成5)年には文化勲章を受章。“司馬史観”とよばれる自在で明晰な歴史の見方が絶大な信頼をあつめるなか、’71年開始の『街道をゆく』などの連載半ばにして急逝。享年72
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感想・レビュー
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優希
52
学園紛争が頂点に達した頃の雑文になります。次々と長編を発表している頃ですね。世間が騒然とする中でゆるぎない歴史観で国を語っているのが興味深かったです。2023/03/20
Tomoichi
17
1968年から1970年頃のエッセイ。名作「坂の上の雲」の連載が始まった頃です。やっぱり司馬遼太郎は面白いね。2023/09/11
時代
14
『司馬遼太郎が考えたこと』シリーズ第4巻。色々な媒体に書いたエッセイなどを時系列順に。昭和43年9月から昭和45年2月まで。「坂の上の雲」連載中「歳月」「城塞」「花神」の頃。恩師 海音寺潮五郎氏へ想い◎2021/03/30
AICHAN
10
司馬さんが過労になると微熱が出ていたことを知って「オレと同じだ」と喜び、「この島の防衛の至難さから考えて、一発の弾ももたずに日本の防衛をなしうる魔術的な政治力だけが、今後の日本の首相になりうる唯一の条件」「国家…を…すこしずつ作りなおし…てみる必要がある…そういう覚悟をもたない政治家は容赦会釈なしにひきおろしてはまう必要がある」という意見に共感し、「君が代」の元が大奥にあったことに驚いた(私は薩摩の民謡だと思っていた)。こんな読者を持って草葉の陰で司馬さんは嘆いているよな…。すみません。2012/05/09
まさにい
7
ここに書いてあったのか。『歴史の不思議さ』の中で、「君が代」が正月元旦徳川家の大奥で歌われていたことだ。今、国歌になっている天皇家に対する歌が、実は徳川の大奥で歌われていた歌であったことに最初に読んだ時、まさに歴史の不思議さに思い至った。その後、憲法の君が代訴訟の際に、この司馬さんの随筆がどこに書いてあったか調べたのだが見つからず、ず~と探していた。さて、この歌は、徳川の大奥だけでなく、形を変えて薩摩の琵琶歌の中にもあり、古今集にもあるらしい。その上で『君が代』訴訟の憲法上の問題点を考えないといけない。2022/08/14