内容説明
歴史と文明、人間について天性の明るい知性で考えぬいた司馬遼太郎が、40年以上にわたる創作活動のかたわら書き残したエッセイを、年代を追って収録した集大成シリーズ。第1巻は、新聞記者時代から、『梟の城』で直木賞を受賞する前後まで。食や大阪、神戸についてのエッセイや、戦争中の極限的経験を綴った「それでも、死はやってくる」など、若き日の思索をたどる89篇を収録。
目次
請願寺の狸ばやし
それでも、死はやってくる
妖怪と鬼面
石楠花妖話
「百人展」雑感
「風景」という造型
影なき男
モダン・町の絵師中村真論
この本を読んで下さる方へ
あるサラリーマン記者〔ほか〕
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923‐1996。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表。’66年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。’93(平成5)年には文化勲章を受章。“司馬史観”とよばれる自在で明晰な歴史の見方が絶大な信頼をあつめるなか、’71年開始の『街道をゆく』などの連載半ばにして急逝。享年72
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感想・レビュー
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優希
52
若かりし頃の司馬さんの思索が興味深いです。新聞記者から直木賞受賞までの雑文ですが、後の世界観の原点があるように思えました。2023/03/14
金吾
33
○司馬さんの初期のエッセイです。初期の段階で既に幅広い分野を網羅していることに驚きます。「それでも、死はやってくる」「風景という造型」「この本を読んでくださる方へ」「顔の話」「魚ぎらい」「忍術使い」「別所家籠城の狂気」「生きているご先祖を」「無銭旅行」「出雲のふしぎ」「わかってください 酒を飲む苦しみを」「僧兵あがりの大名」「馬フン薬」「ふたりの平八郎」が好みです。2023/05/20
金吾
29
○司馬遼太郎さんの初期のエッセイ集であり、面白かったです。司馬さんの人物表現は絶妙であり本作でも遺憾なく発揮されていますが、食べ物の記載がほとんどないていう疑問に感じていたことが本作で解消されました。鯛の焼死体という表現に笑いました。出雲の話もかなり好きです。2021/02/04
ピンガペンギン
27
司馬氏が産経新聞大阪本社文化部長(確か美術と宗教担当だった)だった時を思い起こした文章などもある。当時の親しい上司であり、出雲出身で「カタリベ」の家系に生まれ、自分がそのカタリベであると称する人のエピソードが面白かった。(1961年の文)満州の山中に狩猟採集民であるオロチョンという少数民族がいた。P184にあるが、出雲の郷土史家は、司馬氏の上司も、ヤマタノオロチ伝説のオロチ=オロチョンであるという説をもっていたらしい。カタリベというのは記憶力の良い者が選ばれ、前のカタリベから一家の伝承を語り伝えられる。2025/03/11
Tomoichi
23
1953年から1961年までの新聞記者時代から「梟の城」で直木賞を受賞する頃までのエッセイ。まだ司馬遼太郎ではなく本名の福田定一時代ですので、マニア向けですね。彼が新聞記者になるきっかけの話に地元が登場する。現在のどのあたりにあった闇市なのか気になります(笑)司馬遼太郎の小説は大好きでよく読んでいた時代もありますが、ちょっと集中して彼のエッセイを読んでいこうと思います。2023/09/11