出版社内容情報
瓦解する幕府の海陸軍軍医総裁となった松本良順は、官軍の来襲とともに江戸を脱出し会津に向かう。他方、ともにポンペ医学を学んだ関寛斎も、官軍野戦病院長として会津に進軍し良順と対峙する。そして、激動のなかで何らなすところなく死んでゆく伊之助。徳川政権の崩壊を、権力者ではなく、蘭学という時代を先取りした学問を学んだ若者たちの眼を通して重層的に映し出した歴史長編。
内容説明
瓦解する幕府の海陸軍軍医総裁となった松本良順は、官軍の来襲とともに江戸を脱出し会津に向かう。他方、ともにポンペ医学を学んだ関寛斎も、官軍野戦病院長として会津に進軍し良順と対峙する。そして、激動のなかで何らなすところなく死んでゆく伊之助。徳川政権の崩壊を、権力者ではなく、蘭学という時代を先取りした学問を学んだ若者たちの眼を通して重層的に映し出した歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
むーちゃん
138
全四巻読了。 医者の観点からの幕末史。 政治家の多い司馬遼太郎作品のなかでも異質だか、新鮮で幅と奥行きを感じる作品でした。 戦いの裏にある治療。 大切です。 2020/03/26
雪風のねこ@(=´ω`=)
138
徳川幕府が倒れ薩長土肥が台頭した。良順は徳川に恩義を感じ会津会戦まで戦医を勤める。伊之助は相変わらず語学力を発揮し通翻訳を勤める。寛斎は流転する権威に辟易し果ては医を棄て蝦夷地を開拓する。大きな時代の流れで優れたものは常に入れ替わり、台頭しては消えて行く。常に自己を鍛え、他人を愛するのは偏にこの流れを渡り歩いて行く為なのである。語学だけ優れていても他人に伝わらなければ意味が無い。だが取り零してしまったものを、何度も何度も何度も掬い上げて積み重ねてきたものが、医学であり、人生なのだろう。2018/01/16
優希
77
徳川政権崩壊の時代、蘭学を学んだ者たちの目を通じての物語だったのだなと思いました。海軍軍医総裁となった良順、共にポンペ医学を学んだ関寛斎、激動の中にいながらも何事もなく生涯を終えた伊之助。彼等は皆、権力はないものの、医学という学問を学び、生き抜いたと言えるでしょう。幕末を医学から考察した作品と言えますね。2018/12/30
さつき
73
時勢に乗ってくる官軍と、江戸から落ちていく幕軍。新撰組の末路を見届けつつ会津へと脱走する良順と、仕える藩が官軍側になったため薩長兵の救護に明け暮れる関寛斎。どちらの心情も切ないです。従軍する良順の活躍をもっと読みたかったので、そのあたりの描写が薄いのは少し残念。司馬さんは伊之助への思い入れが強いみたいで後半はまた彼の行状がメイン。正直、どうしてそこまで伊之助に肩入れするのか理解できず、ちょっと消化不良です。あとがき様の文章では伊之助を通して江戸時代の身分制度の息苦しさを書きたかったように述べられてますが…2018/04/17
kawa
56
大政奉還から維新・明治にかけての良順、伊之助、寛斎を描く。この時代を、直前に読了した伊東潤著「走狗」が薩長側の視点で描くのに対して、本書は幕心内部の動きや視点で描かれ、比較的な読みもできラッキー。さてこの四巻、倒幕後の3者3様のその後の人生、長大な後書きのような趣きで司馬氏の蘊蓄も滑りまくる。とは言え、決して面白くないわけではなく、幕末・維新を医学周りの脇役の視点から、壮大なドラマとして見せていただいた感、読了後はしばし茫然。映像化しても面白いしだろうし、いずれは再読したい作品だ。2019/02/11