出版社内容情報
幕末海軍の教師団にポンペという軍医のいることを知った松本良順は、あらゆる圧力を断ち切って長崎に走る。やがて佐渡から語学の天才である弟子の伊之助を呼びよせた良順は、ポンペを師に迎え、まったく独力で医学伝習所を開講し、あわせて付属病院を建てる。ひろく庶民に門戸をひらいたこの病院は、身分で閉ざされた社会に、錐でもみ込むように西欧の平等思想を浸透させてゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪風のねこ@(=´ω`=)
162
他国の社会通念を他国に持ち込むのは、ある意味毒である。特に島嶼国家である日本では。漢方医の権威が盛んだったのは、日本に神道が根付いていたからでもあると考える。だが蒸気機関で船を動かせる様になり、あたかもメスを入れるかの如く切り開かれてゆく日本外交と露わになる身分制度。その現実と理想との対比がこの作品の肝所と言える。(勿論二者は常に矛盾し永久に一致しないのだが)現実として初の国営市民病院が出来、民衆の支持を得、明治以降の西洋崇拝に繋がる。(続く2017/09/24
むーちゃん
109
二巻読了。 伊之助平戸に永住? 良順 長崎に病院建立。これからどうなる?2020/01/06
優希
78
独力で医学伝道所と付属病院が建設されます。ポンペという軍医の存在を良順が知らなければなし得なかった出来事でしょう。庶民のために、身分関係なく開かれたことで、欧米の平等思想が医学の世界にも浸透しようとしているのでしょう。2018/12/30
みつ
59
陽暦1857年(安政四年)、ポンペ・フォン・メーデルフォールトが、海軍伝習所の一室で正規の医学を開校。彼の情熱とともに良順と伊之助が果たした役割も大。天才でありながら人の感情を推し量れない伊之助はポンペの怒りを買い、平戸へ向かう。ここからの彼の行動がすこぶる興味深い。一方良順も僧形をした幕府高位の奥御医師でありながら、新任奉行に悪口をあびせ花街通いで窮地に立つなど結構自在な性格。勝海舟、将軍家定、島津斉彬、井伊直弼など幕末史を語るうえで欠かせない人物も登場。冒頭近くで紹介された関寛斎は物語にどう絡むのか。2025/03/25
やっちゃん
57
竜馬がゆくの裏でこんなことが。相変わらず脱線がすごいんだけどどの話も面白いから困る。特に写真の件は良かった。ドクターボンベのモデルってこのポンペ医師なんだろうな。2023/08/31