出版社内容情報
幕末海軍の教師団にポンペという軍医のいることを知った松本良順は、あらゆる圧力を断ち切って長崎に走る。やがて佐渡から語学の天才である弟子の伊之助を呼びよせた良順は、ポンペを師に迎え、まったく独力で医学伝習所を開講し、あわせて付属病院を建てる。ひろく庶民に門戸をひらいたこの病院は、身分で閉ざされた社会に、錐でもみ込むように西欧の平等思想を浸透させてゆく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪風のねこ@(=´ω`=)
161
他国の社会通念を他国に持ち込むのは、ある意味毒である。特に島嶼国家である日本では。漢方医の権威が盛んだったのは、日本に神道が根付いていたからでもあると考える。だが蒸気機関で船を動かせる様になり、あたかもメスを入れるかの如く切り開かれてゆく日本外交と露わになる身分制度。その現実と理想との対比がこの作品の肝所と言える。(勿論二者は常に矛盾し永久に一致しないのだが)現実として初の国営市民病院が出来、民衆の支持を得、明治以降の西洋崇拝に繋がる。(続く2017/09/24
むーちゃん
108
二巻読了。 伊之助平戸に永住? 良順 長崎に病院建立。これからどうなる?2020/01/06
優希
77
独力で医学伝道所と付属病院が建設されます。ポンペという軍医の存在を良順が知らなければなし得なかった出来事でしょう。庶民のために、身分関係なく開かれたことで、欧米の平等思想が医学の世界にも浸透しようとしているのでしょう。2018/12/30
レアル
71
ポンぺの医学講習が始まる。江戸時代の身分制という部分にスポットをあてて、誰もが自由に受けられる医療!と良順は医師としての矜持を貫きたいが上手くいかない。その一方で自由奔放な生き方を貫く伊之助こと司馬凌海。「己の生き方を真直ぐに」言わんばかりの生き方でその生き方っぷりが痛々しくもあり清々しい。どうしてこれほど評価が低いのか!と思われるほど、良順の素晴らしさと対比するかのような評価の低い伊之助。そんな伊之助が平戸で佳代と…。どうなる伊之助?2017/06/26
たつや
54
ポンペガが出てきてから俄然面白く読めました。これは映画化、ドラマ化したら面白いだろうなあ。物事に厳密な男、ポンペが母国語で授業を始めざわつく生徒のシーンが笑いました。結局、伊之助が通訳することになる。やはり、何でも初めて始めるときは大変ですよね。良順と伊之助の功績は医学界において大きかったですね。2016/11/02