感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
49
凄まじい女の宿業を担いながらも、本能のままに生命を燃やす女性の波乱の生涯に引き込まれました。大胆で激しい世界と激しい気性の生き様は本能のままだと言えるでしょう。2021/05/23
エドワード
17
東京で着物のデザインを手掛ける亮子。現代を懸命に生きる彼女が、大勢の男性に囲まれている喧騒の中で、京都・嵯峨の智蓮尼の庵を訪ね、智蓮尼ことたみのこの上なく激動の人生に触れ、我が人生に想いをはせる、という容れ子構造だ。奈良の貧しい家で生まれ、売られて舞妓となり、大阪、東京、ニューヨーク、パリと巡り、映画に出演、バーを経営、数多くの男性遍歴を重ねるたみ。バイタリティ即ち煩悩の塊である。たみは最後に尼となるが、傍らにかしずく和三郎が見事なかくし味だ。物語の通奏低音に平家物語が流れており、諸行無常の響きがある。2018/04/14
まる
6
ヒロインは2人の形で、殆どがたみが語る過去だが、語っているにしては第三者の文章で綴られている為、彼方の人の動きに感じられてしまい入り込めず残念な一方、京都の描写はとても美しく流石と思った。しかし、あれを「女徳」と言うのか。「徳」とは人が敬い慕う事であるなら、確かに男達はたみに惹きつけられて行く。「徳」ではなく「得」なら納得するが。和三郎があれ程にする神聖さもたみからは感じられない。語っているはずの言葉がなくて、第三者の文章なのなら、聞き手としての亮子の役割は何なのかと思われた。2024/01/16
こけこ
3
1968年版を読んだ。まさに力作!智蓮尼にはモデルがいるのは、読み終わってから知った。人間の孤独、金などの煩悩、苦しみを感じた。これらから私たちは、逃れることができないのだろうか。2025/01/08
yasumiha
3
祗王寺智蓮尼の出家するまでの30年にも渡る女の宿業、本能のままに生き抜いた波瀾万丈な人生を回顧する物語。あとがきでモデルが居たと読んで改めて大正、昭和期に生きた人々の豪傑さ、潔さを感じた。京都や奈良の町並みの風景を美しく描き出し、華麗できめ細かな文体は心地好い。毎回着こなす亮子の着物センスは見事であり、無償の愛を智蓮尼にささげる和三郎の気持ちも分からぬでは無い。立派な別荘を所有し、支援者である鮫島六右衛門の生活振りがうらやましく、京都にはこのよう人々が今でも居るのだろうと思った。京都で生活してみたいな。2021/06/25