感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たつや
53
由井正雪を全く知らず、ただ、山本周五郎の作品だからという理由で借りましたが、予備知識なくても、スリリングなオープニングや子供目線での展開が読みやすく、児童書の歴史小説のような気分で読めました。まだ上巻、下巻へ。2017/07/01
姉勤
28
表題の通り、由井正雪の物語。幼少に大望を見、故郷を出でての青年期まで。軍学を学び、剣術を修めて将来を約束された立場を得るが、その大望のため諸国をめぐる。星見の謎の老人との出会い、島原の乱への参加など舞台も多い。戦国を終わらせた泰平の名の下に蔓延する、矛盾、抑圧、不道義。安定や平和の名の下まかり通る現代のそれに似て。畢竟テロリストゆえ、山本作品の割に主人公の性格にシンパシーが湧かず、反権力謳いながら、その反対側の権力志向やエリート主義を匂わせる。作者が主人公側なのかラスボス側なのか、まだ見極めがつかない。 2020/12/16
ソーダポップ
21
以前、山本周五郎氏の「樅の木は残った」も読んだが、理不尽なまでに厳しい生き方に胸が苦しくなる思いだった。「正雪記」では更にその理不尽さに問題を投げかけている。結論としては政治は大衆から奪うものではあれ、決して与えるものではない。ますます国家をあてにせず、自分自身で生きのびる策を講じなければいけない。正雪がそんな理不尽な時代に生きた姿を知り、勇気を与えられたのである。今を生きる上で多くのヒントを得る作品であったと確信しました。2024/08/25
うたまる
5
「もし自分の星を発見したら、それを信じるのだ。その星はおぬしの運命を司り、生涯の吉凶盛衰を教えてくれる。その星の示すものを疑ってはならない。どこまでも信じて、その命ずるとおりに生きるのだ」……再読。慶安の変の首謀者、由井正雪の伝記小説。伝記と言っても、上巻はほぼ創作の模様。何しろ彼の生い立ちがほとんど分からない。著者はその点を逆手にとって、ノリノリで筆を躍らせている。曰く、埋蔵金の発見、剣術開眼、艶噺など。そしてエンタメに牽引させたストーリーは、下巻の事変に至る。さあ、彼の星、即ち天命を存分に味わおう。2017/05/09
りんご
3
油井正雪の乱については歴史では知ってましたが,どのようなものだったのかは詳しくは知りません。周五郎さんは書いたこの本がどれだけ史実に基づいているかは分かりませんが,歴史のニュアンスなどは分かると思います。2022/04/27