出版社内容情報
鋭く、深く、ユーモラス! 人間観察の達人・周五郎、初期傑作12編。
御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。その女が、かつて縁談を申し込んで断られた和枝であることを知った欽之助は、思いがけない行動で依頼を果たす……。著者の鋭い人間観察眼を際立たせている表題作の他に、後年の“職人もの”の先駆をなす「しぐれ傘」や“滑稽もの”の「竜と虎」など、初期の傑作12編を収める。
内容説明
御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。その女が、かつて縁談を申し込んで断られた和枝であることを知った欽之助は、思いがけない行動で依頼を果たす…。著者の鋭い人間観察眼を際立たせている表題作の他に、後年の“職人もの”の先駆をなす「しぐれ傘」や“滑稽もの”の「竜と虎」など、初期の傑作12編を収める。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903‐1967。山梨県生れ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店に徒弟として住み込む。1926(大正15)年4月『須磨寺附近』が「文藝春秋」に掲載され、文壇出世作となった。『日本婦道記』が’43(昭和18)年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
75
初期の作品を収録した短篇集。のちに誕生する山本周五郎の名作・力作を予感させる読み心地の12篇です。【表題作】は主人公・欽之助の冷静沈着で、うちに秘めた妻への愛情が見事に描かれています。私のお気に入りは、周五郎が得意とする職人もの【しぐれ傘】です。彫師・宗七とお雪のいじらしい恋心が描かれています。或る日、宗七が得意とする「鯉の彫物」を是非彫ってほしい、との大名筋からの注文を許嫁の父親が仲介してきます。それを頑なに「彫れない!」と、宗七は拒否します。果たしてそのワケは…?2024/06/04
nakanaka
61
12編から成る短編集。特に面白かったのは「竜と虎」でした。お互いを認め合っているものの顔を合わせると反発し合ってしまう作事奉行の一郎兵衛とその部下・至。反りは合わないもののいずれは娘婿として迎え入れようと考えてはいたが…、という内容。心温まるユーモラスな作品で素晴らしい。山本周五郎作品を読むとしばしば思うことですが、妻を大事にしなければという気持ちが再確認できます。仕事や子育て、そしてマンネリを理由に忘れていた妻への感謝や大切さを思い出させてくれるので私には必要な読書であることに今更気付きました。2024/10/31
たつや
59
山本周五郎の初心者である自分は、何処から読もう?と悩んでいたが、今のところ、面白いな、上手いなと、感動している。本作も解説を読むと味わい深くなる。表題作の見事なプロットにこれだけで、十分一本の映画になると思う。また、竹槍念仏も好きです。編集者がダメ出しした箇所をほとんど訂正せずに出版したというエピソード、男だなと、感心する。まだ登り始めた山本周五郎山は、まだ入り口なので、どんどん登ってみたいと思う。2017/06/07
AICHAN
55
図書館本。山本周五郎の初期短編集。初期の作品ばかりだからあまり期待しないで読んだのだが、1作品目から面白くてぐいぐい引き込まれた。筋立ての見事さ、実に軽快な台詞回し。山本周五郎は初期からただものではなかった。2019/09/08
金吾
53
○山本周五郎さんの武士物特有の美意識や爽やかさを感じます。「癇癪料二十四万石」「驕れる千鶴」 「大将首」「武道用心記」「人情武士道」が良かったです。2023/03/01