内容説明
江戸中期の尊王論者、山県大弐と出会ったことから藩の内紛にまきこまれた二人の青年武士の、友情の破綻と和解までを描いた初期の中編「夜明けの辻」。元芸妓との結婚を望んだ若侍が、頑固一徹の国家老の伯父を説得するために機略に富んだやり取りをくりひろげる“こっけい物”の佳品「嫁取り二代記」。ほかに「平八郎聞書」「葦」など、山本周五郎の文学的精進のあとを伝える全11編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
92
山本周五郎作品は読友さんのレビューに惹かれて久しぶりに読んだ。藤沢さんの文章も素晴らしいけど、山周さん(読友さんからいただき・笑)の畳み掛けるように筆を走らせた感のある含蓄のある言葉の羅列についウットリ。「嫁取り二代記」は思わずあっぱれ!「梅月夜」が好き。屋敷に突然入ってきた仇討目的で追い詰められた若侍。仇討相手は屋敷の主・千之助の婚約者の兄。婚約者が兄の助けを乞うてくる。 彼女の本性を知った千之助はある行動に。ほのかなラブストーリーに胸キュン。「熊野灘」のクジラ猟師の話も感動。やっぱいいな、山周さん。2022/09/01
じいじ
88
もうすでに山本周五郎の面白さに、どっぷりとハマっていますが、この短篇の【嫁取り二代記】のほっこり笑える話を読んだら、新たな山周の魅力に出逢いました。これは、上質の喜劇です。主人公の国家老・勘兵衛にぞっこん惚れました。頑固一徹、配下の若侍からも慕われる人格者です。甥から預かった謎の女子・お笛との暮らしが、この話の見どころ。勘兵衛が、口達者で知恵に長けたお笛のペースにハマっていくさまが、何とも微笑ましい。この物語、最後に勘兵衛に抱いていたモヤモヤが、きれいさっぱりに払拭されました。新たな山周の魅力の発見です。2022/07/20
KEI
35
短編11編。やはり周五郎さんの短編も完成度が高いと感じた。タイトルの「夜明けの辻」も良かったが、頑固な叔父と跡取りの甥が嫁とりを巡って駆け引きする「嫁取り二代記」の最後の叔父のひと言に笑わされ、タイトルの意味が分かった。「熊野灘」網元の倅・小三郎が鯨取りを家光に言上し元は武士だった家を千石で取り立てる約束を賜るが、乳母の言葉 「稼ぐ漁師が減って、千石の穀潰してが増えるだけ」と言われ、捕鯨に生きる事を決意する。この2編が特に気に入った。2025/02/28
散文の詞
20
-夜明けの辻-ちょっと正当すぎるほどの武士道が描かれていて、これは、ちょっと読むのにつかれるかもと思っていたら、意外なストーリー展開で、後半は、一気に読んでしまった。 この時代の正義が表現されているのだろうが、一体どこに正義があったのか考えさせられる。 それにしても、久々に読んだせいか、時代物は、漢字が多くて疲れる。 2019/07/12
aponchan
15
山本周五郎氏作品を続けて読む。 夜明けの辻、本題にもなっているが、面白かった。氏の作品は人間の本質やあるべき姿を見せてくれるので読んでいて楽しい。2022/10/20