内容説明
宵節句の宴で七重は隣家の出三郎の袂に艶書を入れる。しかし、部屋住みでうだつがあがらないと思っている出三郎には、それが誰からのものかわからないまま、七重は他家へ嫁してゆく。廻り道をしてしか実らぬ恋を描く『艶書』。愛する男を立ち直らせるために、自ら愛着を断つ女心のかなしさを謳った『憎いあん畜生』。著者が娯楽小説として初めて世に問うた『だだら団兵衛』など全11編。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903‐1967。山梨県生れ。横浜市の西前小学校卒業後、東京木挽町の山本周五郎商店に従弟として住み込む。1926(大正15)年4月『須磨寺附近』が「文藝春秋」に掲載され、文壇出世作となった。『日本婦道記』が’43(昭和18)年上期の直木賞に推されたが、受賞を固辞。’58年、大作『樅ノ木は残った』を完成。以後、『赤ひげ診療譚』(’58年)『青べか物語』(’60年)など次々と代表作が書かれた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
111
表題作を含む11短篇集。粋なタイトルの『艶書』が好い。広辞苑をひもどくと〈えんしょ・艶書:恋慕の情を書いて送る手紙。いろぶみ。恋文〉とある。武家の三男坊・出三郎は、隣家の宵節句に招かれて帰ってみると袂に艶書が…。好きなくせに自身のだらしなさから、告白を返すことができない。そんな男のもどかしさに多少苛つくが、部屋住みの身という立場を考えると同性として痛いほど男の心中がわかる。それから苦節8年、結ばれる日が…。周五郎の描く恋話、なかなか味わい深いです。2017/02/05
AICHAN
35
図書館本。「艶書」ほか11編の短編集。「艶書」という文字ヅラからツヤっぽい話かと思ったらラブレターのことなのね。ちょっとがっかり(スケベですみません)。他の短編も、読みやすいものばかりだったけれど、周五郎の作品にしてはどこか軽く浅く、オチがわかるものばかりで、それほど胸を打たれた作品はなかった。2017/02/28
キムチ
35
11篇の短編収納。豪傑ものあり、人情恋話あり、そして珍しい現代もの2篇。周五郎ものを愛するファンだが、ちょっと常套パターンの大衆小説。「だだら団兵衞」は大衆娯楽の香りが濃い講談調。筆者はこのテーマが痛くお気に入りの様で何度が読んだ記憶がある。男の、上下の、そして人間同士の深く貫く愛・信頼・信義を描いている。題名の話は人生紆余曲折・・だが耐え忍べばきっと海路の日和ありとでもいうような人生訓話。2013/12/22
金吾
32
○いい話が多いです。信頼を考えさせる「だだら団兵衛」やすれ違いからのハッピーエンドな「艶書」が良かったです。2023/09/27
金吾
27
○大好きな武家物を主体に読みました。「金作行状記」「艶書」が良かったです。2024/11/24