出版社内容情報
《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だった。男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
390
栄華を極めた虚飾の女王、富小路公子に関して関係者27名へのインタビューを纏めた形式の本。関係者は主だった者が全員、網羅されているし、その都度話し言葉も変えてその人となりもそれぞれ完璧に描き分けている事に感嘆しきり。それ故どの証言もこれは本当に違いない、と俺などはすぐ信じてしまうのだが、複数の証言を合わせると公子の全体像が段々と浮かんで来る仕掛けだ。証言の間にはそれぞれ齟齬があるものの、全てが公子の嘘のせいだろう。公子は男を踏み台にしてのしあがった、稀代の悪女。面白い。前のめりになる程読まされた。愛ですわ。2024/07/02
ehirano1
284
構成は「藪の中/芥川龍之介」をオマージュした独自の悪女ストーリーのように思いました。途中、やや中弛みしましたが、最終章が全てを優しく包み込み全てを掻っ攫うという予想の斜め上のストーリー仕立てがとても面白いなと思いました。2026/06/14
Major
228
『藪の中』を思わせる多面的な証言の重なりが、男尊女卑の高度成長期を強かに生きた女性の虚実を炙り出す。富を持つ権力者は「悪女」と断罪し、貧しい被権力者は「聖女」と慕う。この分断と論理の不整合こそが本作の真骨頂だ。美という幻想に囚われ、自己分裂を抱えながらも男を利用し尽くして自由と自立を貫いた生涯。我が子にすら本心を見せず、美の中に死んだ孤独な最期が切ない。27の視点が交錯する中で、「悪女」という概念自体が男社会の歪んだ記号へと解体される。客観的事実を消失させる構成の妙で、読者の倫理観を揺さぶる傑作だ。2026/07/26
南北
227
美貌の女性実業家富小路公子が謎の死を遂げる。その人物像を巡って27人の人物1人1人にインタビューする形式で書かれている。面白いのは富小路公子はインタビューされた人たちの回想の中で出てくるだけで本当はどういう人物だったかわからないところだ。ある人物は悪女といい、それを裏付けるような別の人の証言もあれば、全く否定するような話も出てくる。富小路公子の口癖が「まああ」という間投詞なのだが、この一言で人物像が浮かび上がってくるところも良かった。40年以上前の作品だが、今読んでも面白いと思う。2021/07/23
Nobu A
201
有吉佐和子著書3冊目。78年刊行。脊髄反射的感想。「まああ」好き嫌いが明瞭に出そうな。まずタイトルから犯人探しを想起。現代推理小説のように伏線を張り巡らし、最終的に回収する常套手段とは異なる。主人公の親族や関係者27名のインタビューで他殺か自殺か判らない実業家の富小路公子の出自や性格が徐々に浮き彫りに。読書途中から解決せずに終わるのではと予感。案の定、真相は藪の中。余韻を撒き散らすように終演。爽快な読後感には程遠いが、作家の技巧に思わず唸った。恐るべし文才。相変わらずの端正で読み易い筆致。色褪せない佳作。2025/02/02




