感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
69
20代後半に書かれた表題作を含む7作品。青春の青春たる無軌道さや執着みたいなものが描かれている『不満足』、空の怪物アグイーに時より寄り添う依頼主に雇われるぼくが体験する寓意的な出来事がなぜか心引かれる『空の怪物アグイー』の二作品が良かった。2019/09/21
ω
56
空の怪物アグイー。どんな物を想像しますかω? きっとその想像を絶する読書体験が出来ますよ👏(`ε´ ) ! これらは大江が27歳から29歳頃に書いた初期の7作だけど、もうタマランチ。まだ読んでないものが沢山あることが心底嬉しい。2023/07/01
ヴェネツィア
53
いずれも大江の過渡的な時期の作品だが、やはり長編とは別にこれらを書かなければならなかったのだろう。表題作と巻頭の「不満足」とは、『個人的な体験』とも重なり、実生活上の大江にとっては、もっとも辛く苦しい時期でもあっただろう。それを「書く」ことで超克していくのだから、大江はほんとうに根っからの作家なのだろう。かつての太宰がそうだったように。2012/06/06
ころこ
48
『不満足』非常に力の入った文章。だが重く、読み辛さがある。テーマが無いように読めるが、それが力を与えている。『空の怪物アグイ-』と比べると両者には、神経症かうつ病になった人物、その人物は作中の他の人物に分裂している、何かから逃げる、その隠喩として自転車に乗る、犬に追いかけられる、当該人物が自殺する、という共通点がある。『個人的な体験』では鳥(バード)が作者の分身だが、『不満足』では作者自身を投影しているのが鳥でも語り手でもなく、自殺した中年の障害者だと読めるところだ。障碍者をシェパードや施設外の人間が捕ま2024/10/24
メタボン
37
☆☆☆☆ 大江の諧謔的で暗示的な文体が確立されてきた時期の作品。表題作は既読。定時制高校を退学となった僕、菊比古そして二十歳のバードとの小さな町での追跡と逃避「不満足」。カメラマンと妻への新興宗教からの脅迫「スパルタ教育」。90歳を超える老人とアルバイト大学生達とのやり取りが面白い「敬老週間」。被爆した子供たちに保険をかけて引き取る<守護神>だが気づけば立場は逆である「アトミック・エイジの守護神」。四国の山林からの移住の顛末・行く末は?「ブラジル風のポルトガル語」。にせ弟に見る暴力「犬の世界」。2019/07/20