内容説明
大内に代わる北からの脅威・毛利の勢力を排除し、北九州六国を従えて九州探題となった大友宗麟。だが、南から新たに島津の手がのびる。内外の敵との戦いに疲れ、執拗に切支丹排斥をとなえる妻を離別した宗麟は、もう一つの心の王国を求め、洗礼を受けてフランシスコとなった。戦国の世に西洋と正面から向き合った九州豊後の王・大友宗麟を描いて、切支丹の時代に熱い挽歌を奏でる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
96
宗麟がフランシスコとなる心の動きが色濃く出ている気がします。九州探題となったものの、毛利に次いで新たに島津の手が伸びてくる。内外との敵との戦いは心を疲れさせたことでしょう。それが心の国を求める大きなきっかけとなり、キリシタン大名という道を歩む道を選んだのだと思います。宗麟の死後1ヶ月後に禁教令が出たのは運命のいたずらなのでしょうか。戦国の世に西洋と向き合い、キリシタンとなった宗麟の生涯は心に刺さるものがありました。2016/09/14
金吾
32
○人生の許しを請いキリスト教に帰依した宗麟がどんどん現世の欲をなくし魂の平安を求めていく姿は信仰を持っている著者ならではでした。また現世の欲を追及しながら結果的に滅びた吉統と対比してしまいました。2022/01/01
金吾
26
○現世と信仰について、宗麟、吉統父子を通じて見事に表した作品だと感じます。また大友氏の余りに激しい没落についてはものの哀れを感じました。2023/02/10
ちゃま坊
24
毛利の次は島津が最大の敵となった。このピンチを秀吉に助けてもらうが、天下人となった秀吉はその後色々と無理難題を押しつけてくる。それは朝鮮出兵やキリシタン禁制令。その前に大友宗麟の生涯は終るが、仏教で出家し、神社の妻と離婚し、キリシタン洗礼を受けるというは、宗麟の心の中が常にゆれ動いていたということ。大友家が次の代で秀吉に領地没収され消滅する。2021/06/08
とん大西
22
宗麟と秀吉との人生観の対比にも踏み込み、戦国時代のスケール感も楽しめた下巻。重荷を背負った領主として生きるより心の休息を神に求めた宗麟。最大6ヶ国の領土も晩年は秀吉により豊後1国にまで減少。それでも忌わの際にこれまでの業を懺悔し、家族に看取られ安らかに58年の生涯を終えました。宗麟の心がようやく救われた瞬間だったんでしょうか。同じ切支丹だった嫡男吉統は、宗麟の死後没落し、400年続いた大友家は滅びます。難しい作品でしたが、宗麟の心情を通して人生の儚さが淡く深く心に染みました。良かったです。2017/06/24
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