内容説明
戦前に幼少時を過した竹井岳彦は18歳のとき八ヶ岳で遭難し、凍傷によって両足先の大半を失う。戦後の荒廃した雰囲気の中で、青春を賭けるものは山しかないと考えた岳彦は、鴨居からロープを吊して、まず歩行訓練をはじめる。やがて“ない足”を甦らせて、未登攀の岩壁をつぎつぎと征服し、強烈な意志の力と不屈の闘魂によって日本一のクライマーにまで成長していく…。
著者等紹介
新田次郎[ニッタジロウ]
1912‐1980。1912(明治45)年、長野県上諏訪生れ。無線電信講習所を卒業後、中央気象台に就職し、富士山測候所勤務等を経験する。’56(昭和31)年『強力伝』で直木賞を受賞。山岳小説の分野を拓く。次いで歴史小説にも力を注ぎ、’74年『武田信玄』等で吉川英治文学賞を受ける。’80年、心筋梗塞で急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
46
主人公である竹井岳彦は18歳のとき八ヶ岳で遭難し、凍傷によって両足先の大半を失う。しかし、青春を賭けるものは山しかないと考えた岳彦は、まず歩行訓練をはじめる。やがて、未登攀の岩壁をつぎつぎと征服し、強烈な意志の力と不屈の闘魂によって日本一のクライマーにまで成長していく…。普通なら一度の遭難で怖さを知り、立ち上がれないものだが、ここまで山にかける想いが凄い。下巻へ・・・
まーみーよー
28
実在の人物をモデルとした山岳小説。新田さんの「八甲田山死の彷徨」「孤高の人」を思い出すような寒さの中で友人を亡くし、自身の足先も凍傷で失った主人公岳彦の心の傷は深い。山に人生を懸けるのはやはりその体験が元にあるからなのか。岳彦を常に尊重する両親や兄のサポートがあり日本屈指のクライマーへと成長する一方で、歯がゆいくらいお人好しなのか、不器用なのか幼なじみに何度も騙される主人公は、やはり「山で生きる男」のイメージだ。また、戦時中から戦後の荒廃した空気感から山岳ブームが沸き起こる様子が描かれているのも良い。 2021/08/06
ichi
27
【図書館本】実在したクライマーをモデルとした山岳小説。凍傷で両足指を切断し、歩くのも困難だった主人公竹井岳彦がリハビリを経て一流クライマーへ成長するまで…が上巻でした。下巻はどういう内容なのか楽しみです。2016/12/02
山口透析鉄
20
メインの登山家2人の対比、ベタですが分かりやすく、思春期でしたので、2人だけの結婚式にもちょっとドギマギしましたよ。1985/08/17
小木ハム
20
実在の登山家、芳野満彦さんをモデルにした山小説。~郎と付く六人兄弟の五男だが、自分一人だけ『岳彦』(父親の登山中に生まれた為)そんな思い入れもあってか、彼は山にのめり込んでいく。冬の小屋番で、風邪で高熱を出す場面。死なせてしまった河本峯吉と犬のジョンが看病に来たシーンで涙腺にきた。一郎兄さんの言葉『今の若者は自分の生命を賭けてもいいと思うほどの偉大なものが見つからないで困っている』これも響く。春雄はクソ過ぎるし、岳彦はピュア過ぎるしで思わず突っ込む。下巻での因果応報に期待したい。2018/09/14