感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
183
三菱重工名古屋から、各務原まで、牛車で飛行機を運ぶという説明に笑た。自動車だと振動が大きく、馬だと暴走が恐いとのこと。途中、小牧を通過するが、小牧の名古屋空港からさらに倍近い各務原まで行くのはなぜなんだろう。何箇所かの飛行機工場も、飛行場が併設していないとのこと。理由を知りたくなった。解説:鶴岡冬一2013/07/25
青乃108号
168
世界一の戦闘機だった零戦。その零戦に主眼を置き、その開発から開戦時の華々しい活躍、そして終戦間際の特攻、終戦までを詳細な取材をもとに克明に描いた吉村昭の作品。読み終えて思った。確かに零戦は素晴らしかった。日本人としてこの様な優秀な戦闘機を産み出した事は誠に誇らしい。しかしながら、真珠湾攻撃を成功させ、勢いに乗じ一時的に日本を優勢とならしめたのは他でもない零戦であり、結果的に戦争を長引かせ最終的には原爆を2発も落とさせてしまった事もやはり零戦に起因するのだ。日本は零戦を生むべきではなかった。間違いであった。2023/09/28
yoshida
130
日本の誇る「零式艦上戦闘機」。紀元2600年に技士堀越二郎らの力により驚異的な性能をもち現れる。本庄技士の一式陸攻も同時期に完成する。資源も技術もない日本が、当時の欧州列強から独立を保つために技士も必死に軍の要請する性能を追求する。彼等の心血を注いだ結晶として「零式戦闘機」は華々しく活躍する。しかし、ほぼ無傷の機体が米軍に押収され優位は崩れる。飛行機輸送に牛馬を用いる悲しさ。太平洋戦争の敗色が強くなり後継機もなかなか出来ない。「零式戦闘機」は日本人の独創が欧米との差を詰めた象徴と、国力の差の象徴となった。2015/03/11
あすなろ
121
牛車に轢かれ岐阜の各務原飛行場迄進む九六式や零式戦闘機。これが象徴的に史実として最初と最後に描かれる。知らぬという事は怖い事で、戦争前後のこうした歴史を地元にも関わらず僕は知らなかった。所謂零戦の優秀性や優位性、その技術・変遷・製造等からどうして次世代機が生まれなかったのか等含め、長年の僕の疑問が一気に解決。それに加え、第二次世界大戦の戦局への作用や変遷が終戦に至る迄、流石の吉村氏の史実記録文学という筆力により真に迫り克明かつ緻密なシュチュエーションの描き込まれ、圧巻である。そして戦時日本の悲哀を感じる。2024/08/13
扉のこちら側
102
2016年270冊め。戦時中の代表的兵器、零式艦上戦闘機の誕生から最後までの経過をたどり、戦争の有様を語る。軽量化と航続力のため主翼に燃料タンクを作りつけにし、防弾装置を犠牲にして攻撃力を重視したことで、どこの国でも作り得なかった優秀な戦闘機となった。戦争は科学の発達をもたらす。ただそれが人命を奪うことになる、それは負けた国でも勝った国でもそうなのだ。一番印象に残るのは戦闘機の運搬を牛馬に頼っていたというところ。2016/04/24