内容説明
広さ5坪の縄のれんのモツ焼き屋を舞台に、集う客たちの様々な人間模様を鮮やかに描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シブ吉
103
赤ちょうちん。縄のれん。コップ酒。ヤキトリ。酒に酔い、人に酔い、上手い肴で人生の、喜怒哀楽を噛みしめる。カウンターだけの狭い居酒屋で、客に背を向け、モツ焼きの肉を切って串に刺している兆治。ほかの店よりも大ぶりな肉を、不器用な手つきで。「一日に二万円の売上があればいい、それ以上、欲をだすと、ロクなことはない。」そんな無骨なオトコの描写に酔いました。居酒屋兆治に集まってくる、常連客の人生模様。生きることは、ホロ苦い。でも、支えあっていけば、きっと楽しい。それぞれの「胸に秘めた思いやり」に、胸が熱くなりました。2014/03/08
やま
100
居酒屋兆治 2016.02発行。字の大きさは…大活字。 赤提灯のもつ焼き屋に来る客と店主のやり取りを、人情味たっぷりに書いています。 駅近くの居酒屋兆治を営む藤野伝吉の客は、地元の小学校の先輩、後輩が半分ほどをしめ、1日の売り上げが2万円を超えると、残った物をサービスで出し、自身も飲みだすような、あまり儲けようとしない店です。そこに来る客がおりなす物語が面白いです。 特に、伝吉の昔の女さよが、嫁ぎ先の神谷鉄工の若い社員と家出して、伝吉にすり寄ってくる様は、本当になんとも言えないものがあります。🌿続く→2021/04/05
あつひめ
93
こんなお店の常連だったら…少しは考え方も柔軟な人生になったかな…と思いながら読んだ。常連客たちは、幼馴染みのような昔ながらの繋がりが多いようだが…。故郷を離れた者にとってはその環境も羨ましいことの1つ。小さな店の中にはたくさんの人の生きざまが詰まっていて、その番人のように兆治が背を向けながら仕込みをしているような姿が目に浮かぶ。集う場所があり仲間がいるっていいなぁ。昭和のいいところって気がする。高倉さんの映画…観てみようかな…。2013/08/13
こばまり
35
映画では小雪ちらつく漁港の街で健さんがモツに串を打っていた記憶があるが、なんと原作は中央線沿線の国立だ。そういえば彼の地は作家が住んでいた街だ。読んでいる最中は映画のキャスト一覧を横に並べて楽しんだ。その多くがすでに鬼籍に入っている。2025/02/24
Shoji
28
健さん主演の映画の原作。古き良き昭和の作品、なかなか渋好みなお話だ。兆治は東京郊外のもつ焼き屋さんの店主。店はカウンターだけの狭い店。欲を持たず、控えめ、仕事は一途だ。申しぶんのない妻と暮し、古くからの友にも囲まれている。心の奥底では昔の女の影が去来したりもする。平凡な日々を淡々と生きている。それで兆治は満足しているのだ。人の幸せとは何だろうと思わせる作品だった。2025/01/27