内容説明
幸子が道夫の手の傷に不審感を抱いた一週間後、波多野雅子の死亡が報じられた。幸子は死体発見現場に足を運び、道夫と親しいデザイナー・岡野正一を手なずけ情報を得て、ある“事実”を突き止める。それは道夫にとって、絶対に知られてはならない“証拠”だった―。秘密の共有と引き換えに、結婚を要求された道夫は…。男の打算と女の嫉妬が激突する、怒涛の長編サスペンス!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
55
その美的センスに拠って自分はどこまでも上っていけると思ってしまった主人公。そんな思い込みが招いた悲劇。主人公を追い詰めていく桑山検事の推理は最初はいささか強引な感じもするが、彼の強引で執拗な捜査が主人公を追い詰めていく。そしてこの検事の捜査によって過去の事件も明らかになっていくという筋書きになっている。主人公の野望と、彼を取り巻く女性たちの情念と思惑。清張は、現代に置き換えても同じようなことが起こり得る時代を越えた人間の本質を描いていて、文体や背景はちょっと古いが今読んでも十分面白い。2024/01/22
hatayan
39
編集者の枝村幸子に社長夫人の殺害を気づかれ強引に婚約を迫られた佐山は、幸子をも殺害して友人の岡野に罪を被せて捜査を見事にくぐり抜けます。裁判の結果に不審を抱いた検事の桑山は個人的に佐山の周辺を洗い、佐山が完全犯罪を企んでいたことを突き止めます。冤罪を問えず手詰まり感がありましたが、佐山は雑誌記者の福地フジ子を殺そうとするときに自分も溺死して自滅。清張の代表作『黒革の手帖』の男性版のような読後感。巻末のみうらじゅんの解説で清張の小説を「勧善懲悪でなく因果応報」の世界観で書かれているという一文に膝を打ちます。2021/04/03
佳乃
33
騙して利用して・・・男も女も世の中やっぱりそうなっているのだろうか?それにしても佐山は自分で自分の策に溺れ、あんな結末になったのだろう。可愛そうな男だな。人間全うに生きるのが一番ですね。2016/01/19
pdango
20
★★★★☆2022/01/10
Shiori
11
夜読書したさに眠れなくなったのも納得。結末が期待以上のものだった。そこら辺の探偵小説とは違うな、と改めて思わされました。男女のいざこざが絡んできており女性は特にページをめくる手も進むのかな、と。この世の不甲斐なさが非常に感じとられ、個人的に読了後スッキリしました。2016/01/30