内容説明
夫を日本に残し参加したヨーロッパツアー。最初の目的地パリで一行と別れた野木泰子は、一人カイロへと向う。そこには、出張先の香港から会社に辞表を出した谷口真吉が、彼女を待っているはずだった。―妻を捨てた男と夫を裏切った女と、そして妻を求めてその跡を追う夫。不毛の愛を埋めるために砂漠の果てをめざす彼らに、贖罪はあるだろうか。神なき荒野の神なき愛を描く長編。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909‐1992。福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)生れ。給仕、印刷工など種々の職を経て朝日新聞西部本社に入社。41歳で懸賞小説に応募、入選した『西郷札』が直木賞候補となり、1953(昭和28)年、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。’58年の『点と線』は推理小説界に“社会派”の新風を生む。生涯を通じて旺盛な創作活動を展開し、その守備範囲は古代から現代まで多岐に亘った(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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i-miya
51
2013.11.21(11/21)(再読)松本清張著。 11/21 (解説=三好行雄) 推理小説より重要な広がりを持つ領域。 アンカレッジからパリ、エール・フランス機の客席-ひっそりと身を置くヒロイン、の孤独で始まる小説。 パリで観光旅行団から離れるヒロイン。 不倫の帰結、アラブの砂漠に求める。 「カイロまで」の主人公。 第2章、「炭の素」、フラッシュバック風の技法。 北極点越え。 すでに、『波の塔』『風の視線』 『砂の砂漠』では、はるかに単純なプロット。 2013/11/21
i-miya
47
2014.02.07(01/21)(つづき)松本清張著。 02/05 (P016)(カイロまで、つづき) 川又にみせるPP。 オランダ通過。 朝八時、ハンブルグ。 ドイツ国旗。 新聞社の女。 泰子。 他人同士が、ともかくも三週間、外国を前世の因縁のように一緒に歩き回る。 結婚、諦めた女らしい金の使い方。 タイピスト女。 男達、泰子に興味、28歳、人妻の一 2014/02/07
i-miya
40
2013.12.30(12/21)(つづき)松本清張著。 12/29 ◎カイロまで。 1. 窓外は白い色が続いていた。 野木泰子。 パリ行きエール・フランス。 三週間、ヨーロッパの旅、67万円、夫の保雄。 夫や親類たちの生活の様子、眼に浮かばす、とりわけ眼の細いギスギスした真吉の妻、妙子の顔。 新聞社の女。 タイピストの女。 女は4人。 北極通過の証明書。 泰子の心に決断のようなもの。 2013/12/30
みや
36
W不倫の末に中東へ逃避行した二人と、彼らの跡を追いかける夫の道程を描く恋愛小説。不倫しただけで死を選んだり、ここまで決意しながら体を許さなかったり、不倫した妻を海外まで探しに行ったり、私には理解不能な思考回路と行動ばかりで戸惑ってしまった。結婚してみないと分からない感覚なのかもしれない。50年前の作品なので、今とは価値観も大分違うのだろう。だが、夫が小さな手掛かりから足取りを掴んでいく展開は緊張感が漲って面白く、中東の観光地や砂漠に囲まれた部落の様子は臨場感があり、作品としては非常に楽しめた。結末も好き。2018/03/04
エドワード
33
三十余年前の大学生の時に読んだ作品。不倫の恋に落ちた男女の逃避行。五木寛之の「燃える秋」や同著者の「火の路」と同じくシルクロードを舞台にした大人のドラマ。淡々と語る文章。現実には決して起きてはならない物語に限りないロマンを感じた。カイロ、ベイルート、バグダッド。大学の合唱団で歌った岩谷時子作詞、石井歓作曲の「風紋」を思い出す。砂漠は不毛な愛の象徴だ。限りなく甘美な地獄。数年後、大学の卒業旅行でトランジットしたアンカレッジやデリー、バンコクの風景。飛行路も変わり二度と訪れることはないのか、と思うと懐かしい。2020/02/26