内容説明
都内の大学病院に勤務する38歳の医局員・住田友吉が、名古屋のホテルで他殺死体となって発見された。手首を切られ、3リットルもの大量出血によって脱血死したのだった。刑事の大塚らの捜査で、住田が匿名で医学界の腐敗を暴く記事を雑誌に寄稿していたことが明らかになる。そして2ヶ月後、第二の殺人が―。目撃証言相次ぐ「赤い髪の女」とは一体何者か。震撼の医療ミステリー。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909‐1992。福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)生れ。給仕、印刷工など種々の職を経て朝日新聞西部本社に入社。41歳で懸賞小説に応募、入選した『西郷札』が直木賞候補となり、1953(昭和28)年、『或る「小倉日記」伝』で芥川賞受賞。’58年の『点と線』は推理小説界に“社会派”の新風を生む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
65
同じ学会に出席していた医師が連続して殺された。冷静で残酷な殺害方法から怨恨の疑いがもたれるが、動機や犯人像がなかなか見えてこない。ルポのような語り口と遅々として進まぬ捜査に読む手も遅くなったが、終盤は怒涛の展開で一気に加速。辿りついた真相は予想つかないものだった。2024/04/25
aquamarine
62
何度かドラマ化されている本作。先日の放送を見ましたが、原作の方は初めて読みました。ドラマでは医療サスペンスという紹介をしていましたが、ちゃんと犯人捜しでトリックもある本格ミステリで、刑事が足で稼いで犯人に迫っていくものでした。一気に真相に迫るラストは夢中になって読み、想像しなかった結末に息を飲みました(2016年版ドラマとはちょっと結末が違います)。久しぶりの清張作品でしたが、思った以上に読みやすかったのでまたいろいろ読みたくなりました。2016/05/13
達ちゃん
35
刑事たちがじっくりと真相に近づいていくストーリーを十二分に堪能しました。そして何より斬新なラスト!清張さん、たまに読むとしびれます。2020/03/17
きょちょ
22
東京の内科医住田は、名古屋の学会に出てホテルで殺される。同行していた製薬会社の係長と、住田の趣味の俳句の関係者の老女が怪しまれる。その後、同じ学会に参加した東京の外科医香原が殺される。被害者二人の接点は、学会で一緒だった他はない。係長は住田とは接点があるが、香原とは接点がない。老女は二人の医者と関りがあることはわかったが、明確なアリバイがある。被害者はともに大量の血を失っての死亡。やがて第三の殺人。いろいろヒントがあり、真犯人は想像つくものの、415ページ中400ページですべての真相が明かされる。★★★★2020/06/06
よもぎだ
19
面白い。主人公の影が薄いためか、フーダニットの観点における妙が読者を絡めとる構造になっており、見抜ける見抜けないに関わらず大いに楽しめる作品なのかなと。緻密に事実が積み上がり犯人像へ近づきアリバイが崩れる予感を読み進めるごとに肌感で感じられます。そして魅力的な殺し方。堪らないですね。少しずつ血が流出していきジワジワ死に近づけていく方法は動機とも関連し、本文では見えてきづらい殺意、怒りの濃さを感じました。2024/11/08