内容説明
広大なアフリカのサバンナで、巨象に狙いをさだめ、猟銃を構える一人の男がいた。恩地元、日本を代表する企業・国民航空社員。エリートとして将来を嘱望されながら、中近東からアフリカへと、内規を無視した「流刑」に耐える日々は十年に及ぼうとしていた。人命をあずかる企業の非情、その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命―。人間の真実を問う壮大なドラマが、いま幕を開ける。
著者等紹介
山崎豊子[ヤマサキトヨコ]
1924(大正13)年、大阪市生れ。京都女子大国文科卒。毎日新聞社学芸部に勤務。当時、学芸部副部長であった井上靖のもとで記者としての訓練を受ける。勤務のかたわら小説を書きはじめ、’57(昭和32)年『暖簾』を刊行。翌年、『花のれん』により直木賞を受賞。新聞社を退社して作家生活に入る。’63年より連載をはじめた『白い巨塔』は鋭い社会性で話題を呼んだ。『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』の戦争3部作の後、大作『沈まぬ太陽』を発表。’91(平成3)年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
158
日本航空墜落事故を 題材に した 本書は、確かに ベストセラーに ふさわしいだけの 広がりと 深みを 読者に 与えてくれる。 『白い巨塔』『華麗なる一族』『大地の子』など 大作を 発表し続けてきた 作者が、この本でも 重厚な問題提起を 小説という形態をとりながら、 読者に 与えてくれているような気がする。 それにしても、主人公 恩地との 対比のためか 山崎 豊子の本は 善役・悪役が はっきり わかって 読みやすい。
yoshida
131
国民航空に勤務する恩地。恩地は固辞した筈の社内労組の委員長職を止むなく引き受ける。恩地は現場の職員の労働環境改善の為に懸命に働く。結果として、委員長を二期勤めた恩地は社員の待遇改善を勝ち取る。だがニ度のストをせざるを得ず。国民航空は恩地をカラチへ左遷する。恩地は信念を持ち組合活動を行った。節を曲げない恩地の行動は、なかなか真似出来ない。巨大かつ政府とも関係深い国民航空だけに、恩地の行動の影響は大きい。美談とされたサンフランシスコ空港の事故。この原因究明を疎かにしたことが、後の国民航空の大事故を暗示する。2021/01/08
zero1
102
山崎の力作。日本航空をモデルとする航空会社に勤務する主人公は労組委員長としてストを決行。その結果、報復人事としてケニアやパキスタン勤務を命じられる。不条理に苦しむのは「大地の子」や「二つの祖国」と同じ。帰国後は墜落事故の担当に。読んでいてため息が何度も出る。それでも御巣鷹山での悲劇を忘れないよう、しっかりと読まなければ。前に読んだ本。700冊目の登録。
射手座の天使あきちゃん
84
日本航空社内の不条理・傲慢・人間の欲望等を赤裸々に 真相は?、でも恐いですねぇ!
キムチ
80
手持ち札の過剰評価したくはないのだが・・やはり、読ませる。のっけから昭和のあの高度経済成長時代に入って行く夜明けの空気が蔓延している。と言っても、わたしゃ、ガキだったので語り草で知る世界。男がしのぎを削る反面、どうしようもない建前と空虚な見栄と追従が闊歩していた。そして治安維持法の取り締まりでの転向がまだいた時代なのだ。気運高まる中で就職したはずの恩地の歯がみが聞こえるような1巻。ほくそ笑む行天夫婦、八馬。。この時代、組合闘争でで死を選んだ人もいた。強烈な風が吹いていたのだ。堂本のこれからが気になる。2014/03/02