出版社内容情報
なんどもなんども読み返す──そんな素敵なお話を知っていますか。
人間はこの世の中で一番やさしいものだ──ひとり寂しく生きた人魚はそれを聞いて、自分の娘を人間界に産み落とします。夢と希望を託して。美しく成長した娘がたどる運命は、いったいどんなものでしょうか? 数ページのお話のそれぞれがあなたの心の新たなページになる。とっても優しいのにとっても意地悪。そんな25編の小川未明の童話は日本が世界に誇れるすばらしい作品です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
220
全部で25篇の掌編童話を収録。「赤いろうそくと人魚」以外は初読。こうして全体を俯瞰してみると、小川未明の童話群の中にあって「赤いろうそくと人魚」は意外にも例外的なものだったことが分かる。すなわち、未明童話の主流はプロレタリア童話ともいうべき趣きのものなのである。未明が社会主義運動に身を投じていた経歴からも、それはあるいは当然であったのかもしれない。我々読者の側からすれば、人魚の哀しみを、蝋燭の光と幻想の中に描き出してゆく「赤いろうそくと人魚」のような作品を望むのだが。2013/01/05
やすらぎ
202
心に感受の隙間がないと、小川未明氏の空想世界は見えないのかもしれない。…海辺で夕日を見つめる哀愁の背中。まもなく宵の世界が訪れる。誰もいない海の中からこの世界を見つめている。…夢と現実。信頼と裏切り。喜びと悲しみ。出会いと別れ。愛と痛み。ある一面では成り立たない世の中。…灯りだけを探していると絶望が絡みつく。闇の中から希望が生まれてくる。夜に微かな光を感じてホッとするように、寂しさと思いやる心は寄り添い支え合っている。春が来れば夏は過ぎ、秋も去り冬となる。人が生まれながらに持ち合わせている優しさは何処に。2021/11/02
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
185
すがすがしい夕空、月の光の慈悲の輝き、銀色の氷、白く咲く野ばら。 美しすぎてかなしいようなものを、最近よくみている。 空からとうめいな輝くものがぽたりぽたりと落ちてきて、やさしい言葉をかけていきます。 こんなにも美しい世界で、いつでもやさしくできる訳じゃない。 でも、ことばの一粒ひとつぶをいつくしんで、傷つけられても憎まずただかなしみ、できることなら少しだけでも人にやさしくしたい、そう思うような。いつまでもこの本のなかでたゆたっていたいような。 たくさんのひとに読んでほしい、とても美しく美しい本でした。2019/09/07
風眠
160
人間は自分勝手な生き物だな。お金によって変わってしまう人、便利な暮らしのために手放してしまう木々の緑や青い空・・・どの物語にもチリチリとした痛みと、あきらめのような切なさが漂っている。『赤いろうそくと人魚』に感じていた「どことなく不気味」な雰囲気は、大人になって読み返すと「美しくて冷たい悲しみ」だったのだと分かる。どれも短いお話なので、家事や用事のあいまに少しずつ読むのがちょうどいい。「~なのであります」という語り口は、まるで読み聞かせてもらっているかのようで心地よい。『月とあざらし』が特に素晴らしい!2013/02/16
kariya
122
指を痛めたと夜におばあさんの家の戸を叩く娘、白鳥になって飛んでいってしまった盲目の弟、病の娘を抱えた寂しい一軒家に宿を求める旅人。遠く子供の頃に読んだきりなのに、今も記憶に残っている童話のあれこれに驚く。寂しく不思議な、けれど奇妙に胸に残る数々の話を綴る、美しい響きの文を読むのも楽しい。中でも強く印象に残るのは、やはりあの人魚の娘の物語。「この世界の中で、いちばんやさしいもの」と信じて人間に託された娘の行く末が語る、人の心の移ろいと、山を登っていくろうそくの灯の妖しく哀しい美しさは、今も変わらず鮮やかだ。2009/09/05
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