出版社内容情報
こんな世の中、こんな自分、みんな爆破してしまいたい。
31歳という若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、声価いよいよ高い。その異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を見つめて凄絶な『冬の日』、生きものの不思議を象徴化する『愛撫』ほか『城のある町にて』『闇の絵巻』など、特異な感覚と内面凝視で青春の不安、焦燥を浄化する作品20編を収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨大猫 vaicorinthians gavioesdafiel
317
やっと読了しました。イヤイヤ難しい。だけど楽しく読めました^_^ 交尾、愛撫、冬の蝿、過古。好きです2021/03/08
Aya Murakami
214
新潮文庫の100冊2017 新潮文庫の100冊2018 新潮文庫の100冊2019新潮文庫の100冊2020カドフェス2017カドフェス2018 カドフェス2019カドフェス2020 どうやらいろいろな出版社のフェアで大人気の作家の模様。かくいうレモン時限爆弾の時空を超えた爆風にやられてしまいました。書籍というものが時を超えて作者の思いを後世に伝えていくということを身をもって思い知らされた作品でした。レモン以外にも病にむしばまれる社会や人間と対照的に生き生きと描かれた植物多数の作品でした。2020/08/14
康功
178
淡々と、淡々と続く緻密な情景描写に瑞々しく美しい感覚を漂わせ、他の作家では感じたことのない不思議な気持ちにさせられる。なかなか読み取れない作者の言いたいところが、ある一文でパッと読み取れる瞬間がある。綺麗な文章に重たい感覚、そう、詩のような感覚を味わわせる短編小説。作品の完全理解はまだまだだが、有名なのも少し理解できた読後感であった。2016/12/02
のっち♬
166
鬱屈とした心情の中に束の間の悪戯心や愉悦を表出させる表題作から感覚世界に重点を置いた描写がされていて、不安定な語りに内面の倒錯ぶりがよく現れている。他の作品にも言えることだが、淀んだ雰囲気を一変させる様々な空想からは希望を求める語り手の切実な思いと共に生活が陰鬱になっていく倦怠と絶望が伝わってくる。「課せられているのは永遠の退屈だ。生の幻影は絶望と重なっている」—そんな日常の風景をこれほどまでに独創的かつ鮮やかに描き出せるのは、鋭敏な感性と豊かな表現力のなせる技だろう。清澄な生の息吹を湛えた幽玄な作品集。2021/02/18
mariya926
165
最初の短編である檸檬を読んだ時は、理解できると喜んでいましたが…読み進めば読み進めるほど難解になってきました。文章は理解できるのですが、常に空気のように纏っている死や、またみだらな行為をどのように受け取ったらいいのか分からなくなりました。死にゆく人の文章というか、本当の絶望を体験した人でないと理解できないのでしょうか。サラっと読めるのに、理解することを拒まれている感じを受けつつ読了しました。作者が若くして亡くなったということを知っているからこそ、そうなのでしょうか?2020/09/21