内容説明
女と二人、ヨーロッパを旅する男に視えてくる〈日本〉。われわれの帰るべき場所を問う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
63
主人公である美術商・大類は、ヨーロッパかぶれの日本人を見下し、アメリカ人を見下し、団体旅行客を見下している鼻持ちならない四十オトコ。脚を引きずりながら家事をする妻に思いを馳せながらも、自身は10歳年下の女の心と身体を弄びつつ、彼女には「苦しいなら、引き返しどきを見極めろ」って。どんだけワガママでイヤなオトコなんでしょうか!こんなオトコは地獄に堕ちればいいのにな、と願いつつ本を閉じました(笑)。昭和の一時期読みまくった立原作品、彼が在日朝鮮人だったことを今初めて知って、作品への見方が変わりました。2015/04/06
ジュール
10
著者連続読み。祖父の代から続く古美術商の大類は小さい頃から本物のみを見せられてきた。その分偽物を見分けることができる。 多分昭和40年代、離婚した磯子と2人でヨーロッパ、スペインからギリシャを回る贅沢な旅行。同時並行でで若かりし12年前、同じ場所をアメリカ人のリディアと巡った想いでが繰り広がれる。 日本文化を知るだけに西洋の幾何学的文化と相容れない事を再度確認する。 ニヒリズムで自己破壊的な男。それにしても海外の模写が詳細。自分でも行ったに違いない。羨ましい。2024/11/30
松子
6
日本を理解出来なければ、どうして他国を理解できよう。という問いかけをする本書。単純に、西欧を離れ、日本への帰還に思いを馳せるといったものではなく…。学生の時に知り、神保町で探した本書、色んな意味で思い出の一冊です。2015/11/28
はりーさん
4
12年前の女性との旅と現在の女性との旅が比較するように交互に描かれている。女性の想いから逃れつつ、芸術や酒や食事で誤魔化す。そして、心の帰路が分からなくなり、迷い続ける。大類の身勝手な言い分や上からの物言いには、その時代背景を差っ引いても気に入らない部分があるが、屈折した大人の男とはああいうものなのかもしれない。2013/10/20
cue
3
立原正秋のなかではあまり好きになれないお話。他国へ行くことで自分の国を理解するということはわかるけど、主人公が具体的に見ているものがどういったことなのかがイマイチ伝わらなくてイライラした。2012/04/18