内容説明
「君、吹奏楽部に入らないか?」「エ、スイソウガク!?」―学校にいる時間をなるべく短くしたい、引っ込み思案の中学生・克久は、入学後、ブラスバンドに入部する。先輩や友人、教師に囲まれ、全国大会を目指す毎日。少年期の多感な時期に、戸惑いながらも音楽に夢中になる克久。やがて大会の日を迎え…。忘れてませんか、伸び盛りの輝きを。親と子へエールを送る感動の物語。
著者等紹介
中沢けい[ナカザワケイ]
1959(昭和34)年生れ。千葉県館山市に育ち、18歳の高校在学中に書いた「海を感じる時」で群像新人文学賞を受賞、単行本がベストセラーになる。’85年、『水平線上にて』で野間文芸新人賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
317
中沢けいさんというのは、誰もが中学生の頃には持っていたはずの感性を持ち続けている作家だ。この作品を読んでいると、自分の中にもあの頃に感じていたことが、両親に対する、あるいは世の中全体に対する漠然とした不満感とともに甦ってくる。恋心も、大人になってからのそれとは明らかに違っていたし、将来像も漠然としかなかった。思えば、今得ているものの代償に失ってしまったものも多いのだ。そんなことを想起させる小説だった。ただし、随所に見られる甘さが気にならないでもない。ことに、いじめ問題は取り上げ方が中途半端な感が否めない。2014/09/18
ダリヤ
149
前半はびっくりするくらいはいりこめなくってつまらなくって、読みきれないかとおもってしまった。吹奏楽部でなくっても、合唱やリコーダーで集団で演奏をしたことがあるけれど、この物語をよんでその経験以上のものを彼らと一緒に体験できた。楽器をあつかうことができないわたしも、まるでなにかの楽器を演奏しているかのようにタクトをみつめ、みみをすまして、からだのそこからおとをだし、それぞれの音と一体になるような、そんな感覚になった。校舎で響く、楽器たちの音がなつかしい。2015/03/03
ちょこまーぶる
119
面白かった。練習中の部員のバラバラ感が時が経つにつれてしっくりときて、本番前の緊張感とブラシをみんなで借りに行っていたという同じ方向に向かっている姿、そして堂々とした本番の演奏の情景が浮かびました。ただ、普門館での演奏シーンをもう少し堪能したかった思いです。2012/07/03
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
117
〈巨大なロールケーキ〉は夢舞台。内気な男子・克久は中学入学と同時に吹奏楽部に入部する。運動部以上にハードな練習、47人のチームで創る演奏でミスは許されない緊張感、同級生の陰湿ないじめもあって、彼の心にはうさぎが棲みついた。余計なところでいたずらを仕掛けたり、時々持て余してしまう事もあるけど、お茶目で小さな〈相棒〉と共に成長していく克久。やがて大会の日を迎える……。技量とは関係ない部分で心に響く〈音〉がある。10代に戻りたいなんて一度も思ったことないけど、いくつになってもドキドキ・ワクワクは忘れたくないな。2015/07/19
ゴンゾウ@新潮部
115
とても清々しい作品だった。学校にいる時間を短くしたい、帰宅部志望の克久少年がなんとなく入部してしまったのは、全校中で最も練習時間の長い吹奏楽部だった。はじめは頼りなかった少年が熱血先生、先輩、同級生に囲まれながら徐々に吹奏楽にのめり込んでいく。最初は友達からのイジメにも抵抗できなかった克久が部活動を通してどんどん逞しく成長していく。高校時代は本当に伸び盛りなんですね。最終章の全国大会での演奏シーンの描写は臨場感があって本当にシバの女王を聴いているような迫力があった。2015/08/16
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