出版社内容情報
それは都市を導き、未来を方向付ける塔になる――。建築家・牧名沙羅は、〈同情されるべき人々〉【ホモ・ミゼラビリス】が暮らす新時代の刑務所・シンパシータワートーキョーのコンペに参加する。人は、どこまで寛容で在らねばならないのか。空虚な言葉と正義が支配する東京に、沙羅のデザインしたタワーがそびえ立つ。生成AI時代の到来を預言する衝撃の芥川賞受賞作。文庫化に際し、単行本未収録の短編を収録。
【目次】
内容説明
それは都市を導き、未来を方向付ける塔になる―。建築家・牧名沙羅は、〈同情されるべき人々〉が暮らす新時代の刑務所・シンパシータワートーキョーのコンペに参加する。人は、どこまで寛容で在らねばならないのか。空虚な言葉と正義が支配する東京に、沙羅のデザインしたタワーがそびえ立つ。生成AI時代の到来を預言する衝撃の芥川賞受賞作。文庫化に際し、単行本未掲載の短編を収録。
著者等紹介
九段理江[クダンリエ]
1990(平成2)年、埼玉県生れ。2021(令和3)年、「悪い音楽」で文學界新人賞を受賞しデビュー。’23年『Schoolgirl』で芸術選奨新人賞、「しをかくうま」で野間文芸新人賞、翌’24年「東京都同情塔」で芥川龍之介賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
50
建築家が主人公だが、建築の話ではない。建物を建てるプロセスや建物そのものに重点が置かれているわけではない。建物の塔につけられることになる名称への語り手の違和感から始まって、言葉とは何かを考える話だ。それにしても、「ホモ・ミゼラビリス」という新たな呼称についての語り手とAIの対話は、背中をゾクッとさせるものがある。AIは思考しているわけではなく、インターネット上に存在するたくさんの言葉をうまくつなぎあわせて文章を作成している。だから、そのプロセスのわからない言葉はときに自分が求めているものとは微妙に違う。2026/08/16
tonpie
42
「しをかくうま」に次ぎ、九段理江二冊目。ポリティカルコレクトネスの究極表現である犯罪者の収容施設「東京都同情塔」をめぐる物語。これはフーコーの言う一望監視方式(パノプティコン)による管理ではなく、逆に外界を360度展望できる70階建ての高層マンション式の牢獄(?)で、「内部と外部の隔たりを極力感じさせない開放感のある空間設計は(略)中に足を踏み入れたものに、我々のいた世界のほうこそが牢獄だと自覚させる」また、金銭支給もあり、「ドージョートーはベーシックインカムの実験場」↓2026/07/17
niisun
30
受刑者が「ホモ・ミゼラビリス(同情される人)」と再定義され、『東京都同情塔』というユートピアの仮面を被ったディストピア建築に収監される。犯罪者を同情される人とする考え方や具体的に例示される受刑者A子の生い立ちからは、ベストセラーとなった宮口幸治氏の『ケーキの切れない非行少年たち』の影響が見えます。『東京都同情塔』と共鳴するのは、幻と化したザハ・ハディドの新国立競技場。当時は予算の問題で破棄されたが、最近の神宮外苑の再開発への反発を考えれば、やはり建つことのない建築だったのだろうなと思いながなら読みました。2026/05/28
よっち
29
ザハ案の国立競技場が完成し、徹底した寛容論で犯罪者すら優遇される社会。新宿御苑に超高層刑務所が建てられる物語。自身の苦い過去の経験から犯罪者に寛容になれない建築家・牧名沙羅が、設計コンペに挑むものの仕事と信条の乖離に葛藤し、設計した建物が「東京都同情塔」と名付けられ定着していく皮肉な構図で、多様性を尊重するとはどういうことか、曖昧な言葉でオブラートに包めばいいのか。同情をされるべき犯罪者が自由に優雅に暮らす欺瞞、比較が良くないとされ、寛容であることを求められるもやもやに垣間見える複雑な想いが印象的でした。2026/04/23
小太郎
27
九段さんの「school girl」を読んで気に入ったので、芥川賞だし文庫になったので読みました。あれ?全然読み辛いじゃないと最初は戸惑いながら?。舞台は近未来そこは2020年にオリンピックが開かれ、ザハ案の国立競技場が建設されている東京。主人公沙羅は東京都が新しく建設するタワー型刑務所に応募しようとしている女性建築家。あとは言葉の重層的に積み重ねで語られる、寛容的なポリコレ社会に対する呪いの悪口。発想は色々飛んで金閣寺やバベルの塔へのオマージュにもなってる?でももう一つの短編の方が彼女らしいかな。★32026/05/22




