内容説明
初江の子供たちは、三田綱町にある祖父時田利平の病院で生まれた。長男の悠太は天体観測や読書や模型飛行機に夢中、彼の周りには祖父をはじめ刺激的な大人がいる。悠太は妹のヴァイオリンの稽古が縁で、初恋の千束と再会。昭和16年、国民学校六年生の悠太は学友の死にも遇い、ある夜の出来事から虚ろになった母が気になる。昭和17年4月の東京初空襲までの悠太の少年の日の情景。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
143
第3巻は悠太の視点で 始まる。第一巻、二巻の 子供視点でのサイドストーリー。 だがその語らいは、思わせ振りで 面白い。続編の『雲の都』で 活躍する人々がまだ幼く、 このあたりも大河小説の 醍醐味だと思う。 初恋の人、千束もまだ 幼く愛くるしい。悠太の 妹央子がバイオリンに のめり込む様も、行く末を 暗示しているかのようだった。 2014/04/20
湖都
5
第3巻は、初江の長男・悠太の手記が半分以上を占める。幼年期の回想となっていて、1、2巻の出来事を悠太の視線から物語る。1巻冒頭の出来事の真相が明らかにされたりといった、新しい楽しみもある。そして、気づけば悠太は2巻の時点を過ぎて成長し、気になる場面で手記は終わり、また大人達の視点での物語が2巻の終わりの部分を引き継いで再開される。悠太の手記ですでに読んでいる部分なので些かまどろっこしい。とりあえず、初江の夫・悠次はろくでもない男だ。2017/12/11
寿里子
2
こういう書き方のあるのですね。1,2巻と普通に物語として書かれていたことを、途中で登場人物の視点で書かれてる。復習あり、予習ありです。2018/01/18
藤枝梅安
2
しかし、その人物にとっての「真実」が人数分だけあり、それらが錯綜し絡まり合い、 読者を不安定な船の上にいるような状況に置くことで、 この小説は舞台となるあの時代の 「何が本当で何が本当でないのかわからない状況」や 「次の日になると善悪の基準が逆転する状況」を読者に疑似体験させる効果を生み出している。2009/11/11
uchi
1
少し違った視点から物語が語られた3部前半。ドラマの途中での回想シーンみたいな感じで、整理になりました。2020/08/30