内容説明
元海軍軍医の時田利平は、大正2年、三田綱町に開業。外科医の名声と妻菊江の実務で、時田病院は驚異的に拡張している。昭和10年、利平の長女で3人の男児の母親の初江は一高生の甥と密通し、次女夏江は陸軍中尉・脇敬助との結婚を諦めた…。著者のライフワークである『岐路』『小暗い森』『炎都』の三部作を『永遠の都』という総タイトルで刊行する文庫版(全七巻)。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
69
約1週間の出張期間を利用して、久しぶりに「大河小説」を 読んだ。 快い 読了感に浸っていたのを覚えている。 時代は、昭和10年から 昭和22年まで、226事件から 敗戦直後までの 3家族の 変転を 描いたもので、時局がら 暗い時代へと突入していく、あたりの 雰囲気が特によく 伝わって くる。 時田利平、初江、夏江 などを 軸にしながら、人の夢、恋、 憎しみ、破壊、等を 埋め込んでいって 時代を 写し込んでいるあたり、 長編小説が 好きな人には お勧め。2010/07/04
松本直哉
32
二二六事件の直前までの、中国ではすでに事変という名の戦争が始まっていても、まさか本格的な戦争など起こるはずがないと思われていた最後の平和な時代を象徴するのは、タイトルの示す夏の海辺の場面で、鎌倉の夏の海の描写、花火と盆踊り、踊りの輪から抜け出して密会するところが印象的。日露戦争での軍功を誇りにする元軍医の病院長時田利平の野心的で独断的な個性を核にして、その子どもたち、孫たち、親戚と広がる人物の群像を、悠々と流れる大河のような筆で描き出す。物語は始まったばかりなのに、すでに危うい予感と予兆に満ちている。2024/08/31
かおる
12
何が面白かったかと聞かれると困るのだけど、何だか読み進めずにはいられない作品だった。昭和初期の家族の姿が、ありありと目に浮かび、どこか現代に通じる不思議な共感が散りばめられている。しいていうなら、文章そのものが面白い。そんな本でした。長編7巻、頑張らなくてもどんどん読めてしまいそう。楽しみ。2015/11/16
ハッカ飴
7
戦前の昭和を庶民の生活を通して知り、感じることができて面白いです。2・26事件の前、私たちはその後の歴史を知っているから、あんな戦争に突っ込んでゆく前がこんなにのどかだったのかとはと思うけれど、渦中の庶民てそんなものなのかもしれないな。それにしても「THE昭和の男」利平の「男」ぷりはすごいものがある。初江も夏江も「女」の中に閉じ込められている…ようではあるけど、これからどんな人生を歩いてゆくのか楽しみ。全7巻。2巻は2・26事件から始まるよう。楽しみ。2026/01/07
湖都
6
昭和10年の東京が舞台。海軍あがりの外科医・時田利平とその娘たちが主人公と思われる、大河小説第1巻。少し『楡家の人々』を思い出す雰囲気。利平は面白い人間で、自らの盲腸(?)の手術を、一番腕がいいからと自分でやってのける。常人ではない。利平の次女・夏江と敬介の恋とその顛末は、昭和初期とは思えない。また、長女・初江の不倫は悲しい予感しかしない。まだまだ序章だ。2017/12/06




