内容説明
金沢の四高柔道部の夏稽古に参加し、練習する日々を過ごした洪作は、柔道のこと以外何も考えないという環境と、何よりも柔道部の面々が気に入り、受験の決意を固める。夏が終わると、金沢の街と四高柔道部の皆と別れ、受験勉強をしに両親のいる台湾へとひとり向かう。―柔道に明け暮れ、伊豆、金沢、神戸、台湾へと旅する、自由で奔放な青春の日々を鎮魂の思いを込めて描く長編小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SJW
151
井上靖の自叙伝三部作の三作目。下巻では4高の柔道部の練習を見学するために金沢を訪れるところから話は始まる。そこで見たものは沼津での友達たちとの緩い生活ではなく、柔道のために全てを捧げるというストイックな部員たち。彼らに憧れ4高受験を決意し、沼津の友達に別れを告げて台湾に向かうところまでの話となる。あまりにもお金や物の管理がずさんで面白く呆れ返った、これを初読したのは大学に入って間もない頃。同じ年頃なのにその野放図なところが面白く笑って読んでいたことを思い出した。しかし、私が通っていた学部は(続く)2018/11/16
のっち♬
93
四高柔道部の夏稽古に参加した洪作は環境と部員たちを気に入り、受験の決意を固める。「ごくらくとんぼ」と言われ、飄々と生きてきた彼にとって規律のある世界は大いに刺激的だった。柔道以外何も考えていない部員がまた個性派揃いで、稽古から休日の何気ないやりとりまでユーモアを散りばめて生き生きと描かれている。中でも大天井は登場シーンからただならぬ豪傑さ。日本海の荒い波に対峙した昂奮や、恋人との悲しくほろ苦い離別など、海岸の場面の詩情豊かな表現も読みどころ。冷血呼ばわりされる教頭とのエピソードもあって温かい余韻が残った。2020/12/28
巨峰
79
「しろばんば」「夏草冬濤」につづく三部作。この小説を読むためにも前の二つの小説も読んでほしい。なぜならこの小説は、日本の青春小説の最高傑作だからです。日本海と太平洋の海の潮の匂いをかいでほしい。
chiru
53
洪作が学業を目的とせず、柔道を目的に四高の受験を決意するのは、それまでの寄り道めいた日々から見つけだした答え。人生のある時期に、かけがえのない仲間と、脇目もふらず打ち込めるものがあることは、一番大切な財産だと思いました。★52018/01/03
kamome46
43
再読。何なんだ!こいつらののほほんとした学生生活(浪人暮らし)は!時の流れがおだやか過ぎる。そして、どうにも主人公「洪作」の性格がつかみにくい。柔道と学問に加え、恋も出てくるのだが、なんだか、洪作はすり抜けていく感じがした。まあ、それはいい。うーん、本作、おすすめです。何がいいかって、友人仲間や先生との会話が面白いんです。しかも、50年近く前に出された、90年くらい前?を題材にした内容なのに、色あせてないんです。「ーあのひと、何を考えているんでしょう。とんぼと同じね。何も考えないで、すいすい飛んでいる。」2020/11/29