出版社内容情報
日本からはるばる海を渡ってきた比嘉勇と現地で育った移民二世の南雲トキオ。ブラジルの入植地で彼らは出会い、親友となった。そして迎えた終戦。祖国大勝利を信じる「勝ち組」と敗北を知る「負け組」の間で巻き起こった抗争が、二人を引き裂いた。分断、憎悪。遠き異国で日本人が同胞に向ける銃口。ふたりの青年の運命が交わったとき。絶賛を浴び、渡辺淳一文学賞に輝いた、圧巻の群像劇。
内容説明
日本からはるばる海を渡ってきた比嘉勇と現地で育った移民二世の南雲トキオ。ブラジルの入植地で彼らは出会い、親友となった。そして迎えた終戦。祖国大勝利を信じる「勝ち組」と敗北を知る「負け組」の間で巻き起こった抗争が、二人を引き裂いた。分断、憎悪。遠き異国で日本人が同胞に向ける銃口。ふたりの青年の運命が交わったとき。絶賛を浴び、渡辺淳一文学賞に輝いた、圧巻の群像劇。
著者等紹介
葉真中顕[ハマナカアキ]
1976(昭和51)年、東京都生れ。2013(平成25)年『ロスト・ケア』で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、作家デビュー。’19年『凍てつく太陽』で大藪春彦賞および日本推理作家協会賞を受賞。’22(令和4)年、『灼熱』で渡辺淳一文学賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
133
★★★★★★★★★☆戦中・戦後のブラジルを舞台とした葉真中顕の長編。12歳でブラジルに渡った沖縄出身の比嘉勇と、移民二世の南雲トキオ。入植地で出会い無二の親友となった彼らは、やがてある〝認識〟を巡り真っ向から対立していく。自分も含め大半の日本人が知らなかったであろう史実を、ここまで掘り下げエンタメに昇華させた手腕には恐れ入る。一見すると滑稽にも思える移民たちの妄信とそれによってもたらされた悲劇は、デマやフェイクが溢れる現代へ鳴らす警鐘でもあるのだ。ポツダム宣言では終わらなかった「もう一つの戦争」に涙した。2025/03/27
mochiomochi
39
熱い太陽が昇ってから沈むまで、壮大な群像劇だった。トキオと勇が2羽のイービスとなって、真っ赤な太陽へ向かって羽ばたく姿を想像し目頭が熱くなる。中盤まではブラジルにいるのに日本人同士なんだか陰湿でう~ん、と思っていた(「ワイルド・ソウル」の影響か?)が、「日本人という呪い」というキーワード。望郷の想い、狭いコミュニティの中での差別。誰もが「英雄」になることを望んだ。情報が十分でない時代、言葉もわからない新天地で必死に生きた日本人の生き様を力強く描いている。戦後80年の年、素晴らしい作品に出会えたと思う。2025/04/14
りんだりん
23
第二次世界大戦後にブラジルで起きた日系移民社会における「勝ち負け抗争」を舞台に、唯一無二の親友として育った2人の若者の姿を中心に描く群像劇。現代社会における、国際社会の分断、ネットを中心とした過剰なまでの意見対立。議論ではなく憎悪による分断。それらを風刺した作品としても読める。しかし説教的ではなく、心が苦しくなる場面も多いが爽やかな気持ちも味わえる不思議で読み応え抜群の作品。★42025/04/14
hukkey (ゆっけ)
22
太平洋戦争の終戦直後、日本が勝ったと誤認する戦勝派と、敗北した事実を受け止める認識派との間で実際に起きた「勝ち負け抗争」を元にして、引き裂かれる二人の少年の友情と葛藤を交互に描いた歴史群像ミステリー。少し読書エンジンかかるまで長い印象だったが、後半からは一気読み。無意識な劣等感と差別。やり場のない怒り。ブラジルに取り残され現地人に締め付けられる窮状を打開したい期待感が余計に熱狂を煽り、デマに真実味が帯びていく。舞台を SNS に移したフェイクニュースの踊る現代は、まるで歴史を繰り返しているようにも感じた。2025/07/06
のじ
12
戦前にブラジルに移民として行った沖縄の少年と、新潟からの移民2世の出会いから始まる、けど、あらすじを知らずに読んだ方が面白いかも。こんなことがあったとは知らなかったので驚きつつ読んだ。後半につれ緊張が増し、目が離せない展開だった。解説にもあったが、今の世の中のあれこれを想起して、人は信じたいことを信じてしまうものだなあと、いたたまれない気持ちになった。2025/06/26