出版社内容情報
飛騨天生(あもう)峠、高野の旅僧は道に迷った薬売りを救おうとあとを追う。蛇や山蛭の棲む山路をやっと切りぬけて辿りついた峠の孤家(ひとつや)で、僧は匂うばかりの妖艶な美女にもてなされるが……彼女は淫心を抱いて近づく男を畜生に変えてしまう妖怪であった。幽谷に非現実境を展開する『高野聖』ほか、豊かな語彙、独特の旋律で綴る浪漫の名作『歌行燈』『女客』『国貞えがく』『売色鴨南蛮』を収める。
著者等紹介
泉鏡花[イズミキョウカ]
1873‐1939。金沢生れ。本名・鏡太郎。北陸英和学校中退。1980(明治23)年上京、翌年より尾崎紅葉に師事。’95年発表の「夜行巡査」「外科室」が“観念小説”の呼称を得て新進作家としての地歩を確立。以後、「照葉狂言」(’96年)、「高野聖」(1900年)、「婦系図」(’07年)、「歌行燈」(’10年)等、浪漫的・神秘的作風に転じ、明治・大正・昭和を通じて独自の境地を開いた。生誕百年の’73(昭和48)年には金沢市より泉鏡花文学賞が創設された
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感想・レビュー
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kaizen@名古屋de朝活読書会
149
なかなか高野聖を理解できないので3つめの文庫として手に取った。解説の吉田精一は、尾崎紅葉との関係をはじめ、分かり易く説明している。本文の「文字づかいについて」現代仮名づかいに改めたとあるが、引用の文語文は旧仮名づかいによる。漢字の字音は現代の字音。難読と思われる漢字には振り仮名。原文よりは分かり易くなっているのだろうと思うが、解説を読んでわかっている内容を、本文を読んで理解しきれていない。2013/10/16
シナモン
114
「高野聖」だけ読みました。初めての泉鏡花作品。慣れない文体に読みづらさを感じたけど、不思議と情景がぱぁっと浮かんできて、幻想的で妖しげな雰囲気を楽しむことができました。ちょっとずつこういう昔のにチャレンジしていきたいな。2023/10/29
シ也
76
泉鏡花の名前を初めて知ったのは、宮脇俊三氏の短編集が泉鏡花賞を受賞したという一文を見た時。その時の自分は(当時まだ中学生だよ!)泉鏡花という人物が女性であろうと何となく思っていた。だから泉鏡花が男性だと知った時に感じた驚きは何とも言えない。「高野聖」は妖怪の話で、妖怪好きとしてはたまらない話。妖艶な女。うん。たまらんね。全体的に読みにくさを感じ、内容を完全には把握出来ていないので、また少し時間を置いたら改めて読みなおしたい2016/06/16
たかしくん。
66
巻末で作者を「異常な神経と感覚をもって、常識を超えた神秘の世界に生きた、現実と非現実との境目をはっきり持ち合わせていなかった人」と評しているが、正に言い得て妙です。「歌行燈」はお伊勢参りの途中の宿場町での、酒と女に浸った男の物語?「高野聖」は、それこそ山蛭に象徴される面妖な動物たち、更に、奇怪かつ妖艶な女を巡る、魑魅魍魎な怪奇談。私にはどうしても閉口してしまう、その文章の難解さも、芸術とも言うべきものなのでしょうね。2015/01/04
ヒロミ
59
鏡花の作品で最も有名な「高野聖」。十数年ぶりに再読してみて「こんな話だったのかー!」と当時の自分の理解力の低さに愕然となった。正直「高野聖」は苦手だと思った。森の中で蛭がたくさん落ちてくる描写などかなりリアルで気持ち悪い…。本作で一番好きなのは「売色鴨南蛮」と「歌行燈」だ。典雅で美しい文章から生きる人間の悲しみが滲み出ていて切ない気持ちになる。「紺の筒袖の上被を、浅黄の紐で胸高に一寸留めた甲斐甲斐しい女房ぶり。」は帯してないってことなんですね。祖母もですが昔は帯はよそ行きの時しかしなかったみたいです。2016/08/10