出版社内容情報
ひとりひとりの人生は奇妙にゆがみ、奇妙に偏っている──。助産婦の祖母、独身の三人のおばたち、会話の少ない父母、のびやかな姉・歩と気難しい弟・始。それぞれの願いと葛藤が溶けあいながら、三世代の時間は進んでゆく。北海道の小さな町を舞台に、失われてゆく一族の姿と、色褪せない人生の瞬間を、記憶をたどるようにして描き出す。読後、静かな余韻に包まれる百年にわたる家族の物語。
内容説明
ひとりひとりの人生は奇妙にゆがみ、奇妙に偏っている―。助産婦の祖母、独身の三人のおばたち、会話の少ない父と母、のびやかな姉・歩と気難しい弟・始。それぞれの願いと葛藤が溶けあいながら、三世代の時間は進んでゆく。北海道の小さな町を舞台に、失われてゆく一族の姿と、色褪せない人生の瞬間を、記憶をたどるようにして描き出す。読後、静かな余韻に包まれる百年にわたる家族の物語。河合隼雄物語賞/芸術選奨文部科学大臣賞。
著者等紹介
松家仁之[マツイエマサシ]
1958(昭和33)年、東京生れ。編集者を経て、2012(平成24)年、長篇小説『火山のふもとで』を発表。同作で読売文学賞小説賞を受賞。’17年『光の犬』(河合隼雄物語賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞)を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
95
新潮文庫の最新刊で未読の作家さんですが、文部科学大臣賞などを受賞されているので読んでみました。最近の物語と一線を画すような大河小説といった感じでゆったりと読みました。北海道の三代にわたる家族の物語で、助産婦の祖母やその独身の娘たち、息子夫婦には子供が二人いてその生きざまが中心になっている気がしました。父親は北海道犬の飼育に一生懸命、娘は天文台に就職してハッブルの生涯についての話なども出てきます。日常のことを淡々と描いています。たまにはこのような小説もいいものですね。2025/04/07
のぶ
68
北海道の田舎町に暮らす添島家。祖父母、父母、父の3人の姉弟、孫世代になる姉妹、9人で構成される。そして、添島家を見守る代々の北海道犬たち。添島家の9人と、彼らに関わる人達が主人公となり紡がれる、様々な時代の様々な瞬間は、決してドラマになるようなストーリーが隠されているわけではない。にもかかわらず、ページをめくるたび、各主人公たちの息遣い、感情といったものが時にジワリと滲み出し、時に鮮烈で心を揺さぶられる。この作家さんの作品を読むのはまだ2作目だけど文章の魅力にとりつかれた。心地よい余韻に浸りつつ読了。2025/06/24
練りようかん
16
北海道の親子三代と配偶者、関わりをもつ人々の群像劇。「消失点」がどういう意味を持つのか、書き出しの一文に興味引かれた。特に助産師の祖母・よねと牧師の父を持つ一惟に感情を動かされ、よねの恩師が凄くて発見と格言に目を開き、二組の両親と仕事そのものに感じるよねの幸せに胸がいっぱい。だが死因は四人の子どもに継がれ物語の一つのテーマ“血統”を、一惟もそれに抗い背負いつつ周囲の出来事で“死ぬことの平等性”を滲ませる人物像だった。時系列のシャッフルが大胆で、胸に去来するもの深くしていたと思う。江國さんの解説も良かった。2025/09/06
baboocon
12
初めて読む作家さん。北海道の道東にある架空の町・江留に暮らす家族三世代と飼い犬の物語。時系列が飛び飛びで進んだり戻ったり、視点もコロコロ切り替わるのでなんだか読みづらく、えらく時間がかかってしまった。そんな欠点はさておき、宗教から科学まで幅広い切り口と静謐な文章ながら情景豊かな描写。緩やかに終わりに向かっていく家族のエピソードは決して明るくはないがどこか自分の家族にも通じる箇所がある。産婆のよねが取り上げた数多くの生と添島家の人達の様々形の死は表裏一体であると感じた。2025/05/24
GO-FEET
7
「火山のふもとで」ほどには支持されていないようですが、個人的には甲乙つけがたし⋯ 《人はみんな生れて、いずれ死んでいく。そのあいだに起る大小さまざまな出来事、悲喜こもごも、感情の揺れや思考のすじみちは、家族にさえすべてはわかり得ない。互いを大切に思っているとしても、家族も個人の集合体なのだ。「しかしその寂しい感情は一度もよねの口からことばにされることがなかった」という一文が本書にはあるのだが(中略)口にされないこと、誰にも説明できないこと、一人の人間の内面の多くは、そういうものでできている。》(江國香織)2025/07/19
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