内容説明
「僕は女を愛せないんです」―。完璧な美貌の青年・南悠一がそう告げたとき、老作家・桧俊輔の復讐遊戯が幕を上げた。「悠一の美を使って自分を裏切った女たちを手酷く堕落させるのだ」。一方で悠一はゲイバー「ルドン」の淫靡を身に纏いはじめ、俊輔はとある「愛」の誤算によって次第に人生をも狂わされていく…。『仮面の告白』と並ぶ同性愛小説の極致。
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925‐1970。東京生れ。本名、平岡公威。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。’49年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、’54年『潮騒』(新潮社文学賞)、’56年『金閣寺』(読売文学賞)、’65年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。’70年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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GAKU
37
今から70年以上前に書かれた作品。文庫で700ページ弱の大作。内容を簡単に要約すると、老作家の檜俊輔が同性愛者の美青年南悠一を利用して、過去に振られたり手痛い目にあわされた女性達に復習を企てるお話。当時のゲイバーや男性同性愛者達の様子なども描かれている。文章はとても美しく私にはやや難解な単語や表現も沢山出てきたりで、いかにも文学を読んだといった感じでした。⇒ 2025/02/06
NICKNAME
34
自分が今まで読んだ三島作品の中で最も長かった。主人公悠一は女性を愛することのできない非常に容姿端麗なゲイであり、その彼を色々な人々が色々な形で愛するという話。今まで読んだ三島作品の中ではエンディングの衝撃度は抑えられていて、予想外にある意味心地よい。ゲイの世界に関して非常に詳細に描かれているが、著者自身がゲイでないとそれは出来ないと思う。三島の奥さんは否定しているとのことだが三島がゲイであったという事は明らかであると思う。2022/01/17
十川×三(とがわばつぞう)
28
面白い。異性を愛せない絶世の美青年主人公を、過去邪険にしてきた女性の元に送り込み復讐を図る老作家の物語。設定から秀逸。三島美文を堪能。▼男色家が集まる店、外国人の集まるGayParty、自分では到底想像の及ばない異世界を楽しめた。▼難しい言葉はネットで調べノートに記録。▼アメトーーク読書芸人、ゾフィー上田氏の紹介で読んだ。2023/11/08
原玉幸子
28
粗40年振りの三島の小説は、「これが自分が若い時分に興奮した三島由紀夫だったのか」と戸惑う作品でした。全ての言動に難しい言い回しはしていますが、性愛そのものや性愛の先に何があるのかも、又言語で表せない何かがあるのかも、彼は語りもせず予感すらも感じさせないのは、昔好んで読んだ作品にあると信じていた、彼の「美への畏怖」とは大きく離れていて、彼の性愛に対するどんな感性が創作の衝動になっているのか……うーん、世界の「切り取り方」が違うんだよなぁ(大岡昇平『武蔵野夫人』の恋愛が時代?)でした。(◎2022年・秋)2022/09/23
コージー
25
★★★☆☆老作家・檜俊輔が、女性を愛せない美青年・南悠一を利用して、自分を裏切った女性に復習する話。どのようなステータスの高い男性も女性も、悠一の美貌の前に屈し身も心も捧げてしまう。しかし悠一は、人を心から愛することができず、沢山の関係を持つことになる。また、悠一の傀儡師である檜俊輔の計略によって、一般の女性と結婚し子どもも授かる。同性愛の生々しい描写が刺激的ではあるが、「男性」として一般の社会を生きようと苦悩する悠一の姿こそが、この小説の見所である。幸せとは、世間が認める綺麗な型の中にあるのだろうか。2023/03/01
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