感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
742
再読。三島の作品群の中では異彩をはなっている。まず、物語の舞台に伊勢湾に浮かぶ歌島が選ばれているが、都市の文学である三島からすれば、異例のこと。次いでは、三島独特の修辞が、ここにはほとんど見られないこと。他の作品では、登場人物たちの微細な心理の綾が華麗な喩法をともなって描かれていくのだが、ここにはそれがない。ここにあるのは、きわめて単純明快な心理であり、行動である。特に主人公の新治において、それが顕著だ。三島の好きな「アポロン的」な男性像である。最後の1文だけが、かすかに三島らしいシニシズムを帯びている。2012/07/23
青乃108号
367
一昔前の百恵.友和の映画は観てはいないが当時あまりに有名であって、その為本作を手にするのにある種の気恥ずかしさを感じたのは俺だけだろうか。しかし生きてるうちには読んでおきたい。読んでみた。意外な程に平易な言葉で綴られた物語は読みやすく、主役たる新治も無垢な若者で感情移入しやすい。初江の純潔、海女の女たちの人間らしさ、どれをとっても好ましく思える。物語も落ち着くべきところに完璧に着地し、読後は非常に爽やかである。2021/07/27
ehirano1
359
大作家によるBoy meets girl小説。他作とは打って変わった方向性に驚く、しかし読みやすいwww。共同体を介した日本の古き良き(?!)価値観の幾つかが後ろに見え隠れするように感じました。2024/09/07
読特
297
伊勢の海。美しい景色。人口1400人。周囲が一里に充たない小島。男は漁師になり、女は海女になる。「その火を飛び越して」の名シーン。後に割腹自殺した作者が若き日に描いた純粋な恋愛小説。その王道さ故に異色とされる作品。何度も映画になり、ドラマにも引用され、21世紀の令和につながる。…情報がネットを駆け巡り、独自の地方色は切り捨てられる今。どこもかしこも外国人観光客を誘致。日本は隅々まで変わっていく。物語の中の素直すぎて、素朴過ぎる人々。日々の現実とは違うその世界だが、あって欲しいと願う心が時代を超えていく。2025/11/03
旅するランナー
285
島民・漁民の素朴な生活・風習、若いふたりの純朴な恋心・若さゆえの不安・未来への希望。それらを三島流に文学的分析・表現し、見事に超一流の小説に仕上げている。すごい作品。「ダフニスとクロエ」を下敷きにしているらしいです。舞台である三重県鳥羽湾の神島には、いつか旅してみたいです。2021/02/14
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