出版社内容情報
世界を愛することと、世界から解放されること――詩はこのふたつの矛盾した願いを叶えてくれる。南仏・ニース在住の俳人である著者は、海を空を眺めながら古今東西の先人たちの詩(うた)を日々の暮らしに織り交ぜて、新たなイメージの扉をしなやかにひらく……。杜甫、白居易、夏目漱石、徐志摩らの漢詩を優しく手繰り寄せて翻訳し、いつもの風景にあざやかな色彩を与える、全31編のエッセイ集。
内容説明
世界を愛することと、世界から解放されること―詩はこのふたつの矛盾した願いを叶えてくれる。南仏・ニース在住の俳人である著者は、海を空を眺めながら古今東西の先人たちの詩を日々の暮らしに織り交ぜて、新たなイメージの扉をしなやかにひらく…。杜甫、白居易、夏目漱石、徐志摩らの漢詩を優しく手繰り寄せて翻訳し、いつもの風景にあざやかな色彩を与える、全31編のエッセイ集。
著者等紹介
小津夜景[オズヤケイ]
1973(昭和48)年、北海道生れ。2000(平成12)年よりフランス在住。’13年「出アバラヤ記」で攝津幸彦記念賞準賞、’17年句集『フラワーズ・カンフー』で田中裕明賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
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感想・レビュー
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はっせー
68
エッセイが好きな人や詩・短歌が好きなひとに読んでほしい本になっている!最近詩や短歌がブームになりつつある。そのなかでも触れられていないジャンルがあると思う。それは漢詩。五言絶句や七言律詩といったものを国語の時間にやったと思う。この本は日々の暮らしなどを描いたエッセイのなかに漢詩が入っているものになっている!良かった。お香を嗅いでいるときの雰囲気に似ている本であった。ちょっと懐かしくて落ち着くような文章。小津夜景さんの文章を好きになったので他の本も読んでみようと思ったー!2023/10/31
ピンガペンギン
36
南仏ニース在住の俳人エッセイ集でとても良かったです。漢詩が沢山紹介されていて自由詩の翻訳で親しめました。李賀(26歳で夭折。沢木耕太郎が「深夜特急」の旅のクライマックスでつぶやいた「飛光飛光 勧爾一杯酒」から始まる詩は李賀作。)、李商隠など興味ある詩人に出会えてこれからの楽しみが増えました。著者が大学時代に出会った体が弱いオチさんとの思い出を、白居易が無二の親友の死後八年経って「ふるえやまない舌と化して」歌った漢詩と絡めてエッセイに仕立てた章は特に印象的でした。著者は在仏20年以上(夫婦で)になって→2024/01/24
月音
24
生活の中に自然にとけこんで、詩があるというのは素敵だ。筆者がいつも海で詩を口ずさんでいたら、見知らぬ老人から「あなたの祖国は詩なのですね」と話しかけられるのは、物語の一場面のよう。彼女の手になる漢詩の訳は、軽やかでみずみずしい。原詩と見比べると、漢字一字が持つ複数のイメージ、微妙なニュアンスが制約のある漢詩の世界に広がりを与えているのに気づく。国内で知られていない詩人、意外な人の意外な詩の多くに、共感と親しみを覚えた。杜甫が、「夏のひやむぎサイコー!」なんて詩を書いてるとは…。2024/08/03
しずかな午後
22
フランス在住の俳人・小津夜景による漢詩エッセイ集。扱う漢詩が一般書としては珍しく幅ひろい。唐詩だけでなく陸游や蘇軾といった宋詩もあり、菅原道真・新井白石・原采蘋・夏目漱石といった日本人の作品も豊富。そして、それぞれの詩に新鮮でリズミカルな口語訳が付き、その鑑賞も冴えている。また、エッセイ中にはアイザック・ウォルトン『釣魚大全』やニーチェ『この人を見よ』などジャンルも国もバラバラなテキストが次々に引用され、比較文学的な楽しさがある。国境も時代も超えた文学の悠々とした広がりを堪能する。2024/05/08
kuukazoo
19
俳人(南仏ニース在住)によるエッセイだが俳句はちょびっとでメインは漢詩。漢詩といえば教科書にあった国破山河在とか春眠暁不覚くらいしか覚えてないので唐の時代のみならずいろんな時代のいろんな人がいろんな思いの漢詩を作っていたことに驚いた。著者によれば漢詩は定型詩ではなく明治になるまで唯一の文語自由詩であったという。著者によるのびやかな翻訳は新鮮で、今までの漢詩の印象が変わった。漢詩を通して夏目漱石や菅原道真の知らない面に触れられたのもよかった。2024/01/20