出版社内容情報
もう一度私を風の盆に連れて行ってください。北陸の風物、大人の恋の儚さを比類なき美しさで描いた名作。
死んでもいい。不倫という名の本当の愛を知った今は――。ぼんぼりに灯がともり、胡弓の音が流れるとき、風の盆の夜がふける。越中おわらの祭の夜に、死の予感にふるえつつ忍び逢う一組の男女。互いに心を通わせながら、離ればなれに20年の歳月を生きた男と女がたどる、あやうい恋の旅路を、金沢、パリ、八尾、白峰を舞台に美しく描き出す、直木賞受賞作家の長編恋愛小説。
内容説明
死んでもいい。不倫という名の本当の愛を知った今は―。ぼんぼりに灯がともり、胡弓の音が流れるとき、風の盆の夜がふける。越中おわらの祭の夜に、死の予感にふるえつつ忍び逢う一組の男女。互いに心を通わせながら、離ればなれに20年の歳月を生きた男と女がたどる、あやうい恋の旅路を、金沢、パリ、八尾、白峰を舞台に美しく描き出す、直木賞受賞作家の長編恋愛小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Aya Murakami
124
尾道の雑貨屋さん兼古本屋さんで購入(1冊100円)した本。 風の盆は名前だけは聞いたことがあるのですが、富山のお祭りかな?笠で顔を隠しているからこそ思う存分燃え盛る恋心を込めて踊るというのは現代のネットの匿名性にも通じそうです。顔を隠しているからこそさらけ出せる本音というのは悲しさやら危うさが混ざった危険な香りがするようです。面と向かっての対話では本音を隠しての建前のコミュニケーションがとられるわけですからね…。 小道具の酔芙蓉もいい味でした。笠に隠れた恋心が赤く燃え盛り、最後は散るように…。2018/11/01
新地学@児童書病発動中
122
なんて切なく美しい小説だろうか。結末では声をあげて泣いた。若い時にお互いに惹かれあっていながら一緒になれなかった男女が、富山の祭風の盆の夜に深い仲になる。お互いに家庭を持つ身でありながら、気持ちが惹かれあうのを止めることはできない。風の盆の描写がしっとりと美しく、この物語に得も言われぬ情趣を添えている。日本人は感情を表現するのが下手なところがある。自分の気持ちを心に秘めて生きていく。この物語の登場人物たちにもそんなところがある。自分の心に秘めた感情を静かに表現してくれるのが風の盆の祭りではないだろうか。→2017/11/08
うりぼう
99
高橋源一郎と橋本治の本を探して、思わず高橋治氏の本を買う。16日・17日と氷見市から富山市へ研修旅行。立山連峰を富山湾から望み、バスガイドさんに「風の盆」の解説を聞きつつ晩秋を走る。不倫であり、過ちであり、焼けぼっくいであるが、七夕の逢瀬のように美しくかつ静謐。とめの共感、清原の哀しみ、杏里の一途さ、362日のうつつを幻に変えて、金石に還る。4日目の都築の夢幻は、小絵の重さに負け、小絵は、トリックスターとなり、ロミオとジュリエットへ導く。自信家の中出は家の所有を気にし、志津江は問いただす。夢をうつつに。2010/11/19
ミカママ
94
大好物の不倫ものだけど、しっくりこなかった。結婚できなかった2人が20年後に再会、七夕のように年イチの逢瀬を重ねる、という設定は好き。恋愛は、障害があればあるほど燃えるものだから。年イチの逢瀬だけが「すべて」、その他の日々はただ息を詰めて過ぎてくれるのを待つだけ、って私自身痛いほどわかるし。ラスト、これぞまさしく「添い遂げる」なのかな。私はイヤだなぁ、こんな(恋愛の)終わらせ方。再来月の帰国で初めて北陸を訪れる予定なので、ご当地の空気感を知る予習になりました。2015/04/27
さと
79
二人が選んだ地はおわらでなければならなかった。風の盆 に踊り尽くす人々の顔を深く隠す笠 悲しみも、憤りも全てを内に封じひたすら舞う。三味線の向こうに聞こえる胡弓の音色が、寂寥感を募らせる。美しすぎる。切なすぎる。交わされる言葉や文は、心の中でしっかり熟成され沁み渡る。まるで笠の中で淘汰されていく感情のように。彼らの生き方というよりも、人の心のありようが見事に描かれていると思った。若い世代に読んでほしい。言葉を放つ、心で想う、慮る、察する・・・伝えきれないことの中にこそ想いが宿る。2015/08/22
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