感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブトムシ
24
志賀直哉は、『暗夜行路』の主人公、時任謙作について、「主人公謙作は大体作者自身。自分がそういう場合にはそう行動するだろう、或いは実際そう行動したいと思うだろう、或いは実際そう行動した、というような事の集成と云っていい。」と書いた。 里見弴 と『多情仏心』の藤代信之との関係も、大体それに近いといってよい。信之一九歳の明治三十九年に作者は一九歳、信之三十五歳の大正十一年に作者は三十五歳である。里見弴は、志賀と同じ白樺派の有島武郎、生馬の末弟である。志賀より五歳年少で、兄たちの友人志賀直哉の強い影響を受けた。
カブトムシ
13
里見弴の「多情仏心」は、1922年(大正11年)12月26日から「時事新報」に連載された。そして、関東大震災のため一時中絶したが、翌年大晦日にいたって290回を完了した。主人公は弁護士の藤代信之で、親ゆずりの邸宅をかまえ、なに不自由なく生活して、多くの女性とも関係をもち、恋愛遍歴を続ける。彼は自分の多情のうちにまごころのままに生きることを心情とする。多くの取り巻きを集め死ぬのが大正12年9月1日、関東大震災のその日の早朝であった。そこから逆算して、本多秋五がこの小説の冒頭は大正11年の歳末と特定している。
がんぞ
5
情痴事件(現場で米国人夫を殺害し夫人は巻添え死、当人逃亡)を起こした普烈への法廷での弁論が下題とともに主題をつたえている。愛慾はときには社会秩序を破壊するが、それは純粋であるときdestinyとも言うべき“赦されるべきもの”ではないか?新聞連載の描く同時代の昭和初めには進み過ぎた考えと言えよう。その直後、主人公・藤代信之の胃ガンは最終ステージ突入。かねてから自覚あり死病と確定。芸能界の関係者で知人多し 。ガンは(年少者以外には)良い死に方で、多くの知人が訪ね、惜しまれて亡くなる。ハッピーエンドと言うべきか2014/06/24
水野洸也
2
村上春樹『国境の南、太陽の西』と同じく、女性受けの悪そうな小説。モーパッサンの如く、短編を積み重ねた長編ともとれる。400頁、「不動堂」の「三」から始まる、主人公藤代信之と寺の住職佐伯との絶妙な会話は笑いを堪えるのに必死だった。2017/01/09
ヤマニシ
1
「しらじらと明けはなれて行った。」(p5)2022/11/25